茨城県を流れる鬼怒川や宮城県の渋井川で氾濫があって、多くの人が被害を受けた。まだ被害の全容は明らかではないが、この問題の本質は「異常気象」という用語にある。
まず、表紙のグラフを参考にして欲しいけれど、最近、温暖化で雨が多いとか、雨量が多いと言われる。確かに理屈上は気温も高く、海水の水温も上がるのだから海からの蒸発量が増えて雨の量も増えているはずである。
ところが、この気象庁のデータを見ると、120年ほど前と比較して、「雨の少ない年(黄色の棒グラフ)」は多くなったけれど、「雨の多い年(緑のグラフ)」は多くなっていないし、雨量もむしろ100年ほど前の方が多い。つまり雨量の変化はない。
また、下のグラフは堤防の決壊した回数だが、戦前からむしろ少しずつ減っている。もちろん雨量も変わらないので当然でもあると思う。
でも、今回の堤防決壊を見ると、基本的な問題が浮かび上がってくる。
1) 異常気象でもないのに異常気象といって、気象関係の災害が起きても責任を回避できるようになっている。
2) 異常気象を強調すれば、観測網、計算機などの気象関係に予算がつき、国土交通省も堤防などにお金がつき、私たちは税金が増える。
3) もともと河川は上流からの泥が蓄積していく(関東平野、濃尾平野などはいずれも河川の泥が洪水でもたらされたもの)のに、堤防を作り、浚渫をしないので、川底が上がり、氾濫しやすくなっている。
4) 日本の環境運動家が「川の自然を守る」のではなく、「川を人工的にする」運動をしていて、管理側も予算が取れるので、川が「蛇行し、氾濫する」という自然の状態をどうするか決まっていない。
5) リサイクル運動で森林が荒れて流木が多く、橋の破壊につながっている。
6) 鬼怒川の堤防の役割をしていた小高い森を「太陽電池の設置」で削ったところが今回は決壊している。
オーストラリアのブリスベンは、ブリスベン川が流れていて、10年から20年ごとに洪水が起こるが、蛇行と洪水は自然に起こるものとして受け入れ、洪水の時に上流から警告を出すこと、洪水の被害を補填するための保険が整備されていることなどの対策をとっている。
またベトナム南部のメナム川は毎年、氾濫させてその土と栄養で農業を行っている。いずれも、日本の環境運動とは全く違う概念だ。
ところが日本の洪水の6つの原因はいずれも「幼稚な環境運動、ウソの環境政策、予算取り、自然軽視」という類似のものが複合したことによっている。日本では堤防が作られ氾濫が少なくなったので、天井川が240もある。ひどい例ではあまりに川底が高くなって、この写真のように川の下をバスが通っていると言うようになる。これは特殊な例ではなくなってきている。(バスが通っているトンネルの上が川)
いずれにしても「川をどうするか」という基本的なことが議論されず、ただ「お金が取れれば良い」ということで議論を避けていることによって起きた洪水で、その意味では今回の洪水は「人災」とも言える。
(平成27年9月13日)