国会で「女性活躍推進法」が可決された。女性の社会での活躍、人生の幸福を両方とも実現するにはまだまだやることが多い。この法律についても女性側からの批判が強いが、ここではちょっと別の観点から考えてみたいと思う。

日本では「環境基本法」、「健康増進法」などこの種の「基本法」のようなものが多い。まずは簡単に言うと「なんとか基本法」ができると「増税か赤字財政になる」ということだ。まるで「風が吹けば」という話と似ているが、もともと「基本法」というのは国会の任務を放棄しているような奇妙な法律なのだ。

たとえば、環境基本法では「環境は大切だ」、「物は大切だから繰り返し使うようにする」、「大気や水は汚れてはいけない」というような内容で、国民の大多数が賛成するような当たり前のことだ。

「健康増進法」も同じようなもので、「国民の健康を増進しなければならない」と言われても、それはあまりにも当たり前で、超党派で可決されることも多い。女性活躍推進法も自民、公明、民主党の共同提案で、若干の修正をへて各党が賛成し結局「全会一致」で可決されている。

政治というのは、国民の意見がさまざまだから選挙を行い、「考え方の違う代議士」を選出して国会で議論するのが基本だ。だけれど、「環境が良いほうがよい」とか「健康は大切だ」などという法律なら全会一致する。

でも、しないよりした方がよいようにも思うけれど、違う。法律ができるとそれにそって役人が勝手に政策を作って実施し、それに大量の税金を使う。日本は議員が立法能力がなく、議論を戦わせることがほとんどない。今、問題になっている安保法案でも、「日本の平和を守るために何がよいか」という議論はさっぱりない。

つまり、基本法は私たち国民の権利を奪い、官僚が基本法のもとで勝手に税金を使う手段を与えるものだ。たとえば、アメリカでTPPの関連法案が否決され(最終的には可決)問題になったが、TPP自体ではなく、TPPが成立したときに失業する人たちをどのようにするかという具体的で「対立点のある具体的な政策」を国会で議論している。

しかし、日本では基本法だけを決めて後は官僚任せだ。これでは国民が代議士を選んだ意味が無いし、役人は基本的には天下りができる仕事しかしないので、今回なら女性関係の政策が増え、天下り団体ができて税金が増えるという結果になる。

健康増進法も同じで、健康を増進するための団体が120ぐらいもできて、そこが「国民を健康にするための施策」を推進するということで補助金をもらい、さらに補助金を出した役人がそこに天下りする結果になっている。

「万機公論に決す」るのとは正反対なので、メタボ騒動、高血圧騒動、コレステロール騒動と私たちは意味の無い「無理矢理作り出した健康運動」に振り回されて健康を損なうことになる。

基本法、増進法、推進法などの法案に対してマスコミなどがその本質の欠陥を指摘して、選挙における私たちの権利を取り戻す必要がある。日本は民主主義が機能していない。

この雰囲気をジワジワと作っているのがNHKで、基本法のように「誰もが正しい」と感じるものをNHKは放送せざるを得ないので、結果的に「リサイクルや温暖化」、「高血圧やメタボ」、それに「女性の活躍」の番組を繰り返し、国民に税金の負担を強いる結果になっている。批判精神のないマスメディアは極めて危険なのだ。

(平成2791日)