今回の強行採決に国民側の責任はないのだろうか?

安倍政権が憲法改正、再軍備を目指しているのはよく知られたことで、わずか半年ほど前の総選挙で安倍自民党は圧勝し、291議席を獲得している。公明党と合わせると改選議員総数47569%になり、憲法改正もできる勢力にした。これは「国民がそうした」のだ。

だから、民主党も主張している集団的自衛権ぐらいはすぐに手をつけることは承知の上で、もっと厳しく言えば自民党、公明党、民主党、維新の党の4つは集団的自衛権に賛成なので、その総数は475名の衆議院議員のうち、実に93%(440名)になる。

選挙は国民がその意思を示し、政治家はそれに基づいて行動しなければならないのだから、自民党としては早期に集団的自衛権に取り組まなければならない。だから、12月の選挙で7月の可決というのは速すぎることはない。すでに国民の意思は示されている。

ところが、現実に衆議院で集団的自衛権の議論がはじまると、学者は憲法違反と言い、民主党は裏切り、世論はアメリカの戦争に巻き込まれたくないとまるで選挙結果と正反対なのだ。

実は国民は前から「二つの自民党」を欲しがっている。一つは「安倍政権的自民党」で憲法改正、靖国参拝、大企業重視、経済成長政策、土木優先、アメリカとの関係強化、農協や地方の重視・・・という従来の自民党政権の政策を踏襲するもの、第二の自民党は「公約を違反しない民主党的自民党」で、平和憲法、市民重視、経済と環境の両立、土木より教育、全方位外交、都市の優遇・・・などである。

いずれも「自由民主」であることは同じで、方向が違う。アメリカで言えば、安倍政権的自民党が共和党、公約違反をしない民主党的自民党が民主党といえるだろう。保守とタカ派の自民党と、リベラル派の自民党という感じだ。

これなら国民は選択できる。現在の日本は「自由民主」以外の政策が成立することはない。共産党という党は「不満のはけ口」、「対立の結果」に生じる社会現象を代表しているから、政策ではない。実際、共産党は「共産という字を使っているが共産主義ではない」と言っているし、「憲法を守れといっているが象徴天皇制反対」だから、これも民主党政権と同じく、政権とは関係のない政党だ。

公明党は独自の宗教との関係があり、維新の党は大阪の党だから党としては意味があるが、国民が自由に選ぶには少し距離がある。だからこそ、2009年に民主党が圧倒的多数の支持を得て政権を握ったのだが、あれほどの公約違反、茶番劇をやったので、国民は「リベラル自由民主党」を失った。

2014年の総選挙で、安倍政権が圧倒的に勝ったのは「できればリベラル自由民主党」に投票したいが、現実にはそういう政党がないので、安部式自由民主党を支持する」ということだった。それが今回の安保法制の混乱になったと思われる。

やはり「歴史認識」から基本的に考え直し、大東亜戦争についての日本人の認識を一致させ、同時に中国の侵略思想を議論し、おおよその合意を得てから、片務的(大人と子供)の集団的自衛から、双務的(大人と大人)、もしくは国連的集団的自衛に進むという「手続き」が必要だった。それは「安倍政権の支持は、積極的支持が40%、消極的支持が60%」と言うことから来る民主主義の政権運営だったと思う。

(平成27718日)