安倍政権は安保法案を強行採決した。「強行」という定義にもよるが、国民の56%が反対のままの可決だから、民主主義から言えば強行と言ってよいだろう(形式的には自民党単独ではなかった)。

なぜ、安倍政権は安保法案を強硬に採決したのだろうか? その理由は「政治、メディア、国民」に求められると考えられる。

第一に政治だが、ここには二つの問題がある。一つは選挙が選挙の形をなしていないということ、第二に民主党という政策に伴う信念のない“口先政党”がいるからだ。まず簡単な民主党の方からかたづける。

もともと集団的自衛権は民主党の基本政策の一つで、2005年には主要政策に入っていた。そして民主党政権時代はさらに憲法を改正せずに集団的自衛権という「解釈改憲」にも首脳部は賛成の意見を示していた。

そこで、今度の国会でも民主党は正面から反対はせず、「集団的自衛権が日本近海に限るか、それとも地球規模にするか」だけを問題にして、「安倍政権が進める集団的自衛権に反対」とした。つまり「安倍政権が進める」という枕詞を使ったのだ。

日本社会が集団的自衛権に反対しているのは、「領域」もあるけれど、主として「アメリカの戦争に日本が参加する」ということに関する拒否感である。民主党は口先政権だが、せめて公約違反の責任を感じて、今回は「集団的自衛権や解釈改憲(憲法違反を承知で防衛を進める)には賛成だが、範囲が違う」と正々堂々と言うべきだった。

共産党は憲法を守れと言いながら、天皇制に反対しているし、中共の軍事的侵略については異議を唱えて否からまったく信用できない。維新もぶれ、みんなの党は解散してしまった。

第一の理由だが、私は現在の小選挙区制がつづくかぎり、政治の混乱は続くと思う。というのは、本来の日本国憲法がいっている選挙は「人を選ぶ」のであって「党を選ぶ」などとは全く書いていない。でも現在はほぼ党しか選べないので、憲法違反の状態にある。

だから「信念を持って行動する政治家」はどんどん少なくなり、党利党略だけの人が増えてきた。

「口先だけの細野現象」と言ってきたが、野田元首相はじめ、市井の人より自分が言ったことに責任を持たない政治家ばかりが民主党にいる。それが野党第一党だからもともとどうにもならないのだ。

時間がかかるけれど選挙制度を変えて一県一区ぐらいにして、多数の候補者からこれはと思う人を選ぶことができるようになることが大切だ。そうしたら国会の強行採決は国民の責任になるけれど、今は小選挙区だから自民党しか選べない。その自民党が多数を採っているからといっても、それは正しくはない。

(平成27716日)