戦後70年。日本が平和で過ごしてきた原因の一つに「平和憲法」があることは間違いない。ほぼ国民のすべてが知っているほど憲法九条は有名で、少し極端ではあるが、なにしろ「戦争はしない」ということを明言している。
軍隊は持ってはいけない、陸海空軍はダメ、交戦権も認めないというのだから、世界にもまれだし、そんなことがこの世界で現実に憲法として存在するのかというほどある意味で奇妙な条文だ。
でも、この条文が効いて平和が保たれたという人が多い。私も一部はそう思うが、やや自己満足が入っているような気がする。日本が平和憲法を守ってきたからどこの国からも侵略されなかったのではなく、「集団的自衛権」を発揮したからではないかと思う。
サンフランシスコ平和条約で日本が独立しても、日本には世界一強力なアメリカ軍が駐留していた。すぐ始まった朝鮮戦争ではさまざまな途中経過はあったけれど、結局朝鮮半島の半ば(38度線)で止まり、日本には引き続きアメリカ軍が駐留した。
つまり日本は「軍隊が無い状態」ではなく、「日本軍はいないが、アメリカ軍はいる」という状態だったのだから、日本は一度も「平和憲法の状態」ではなかった。憲法が制定されて以来、日本人は一度も憲法を守ったことがない。
「アメリカ軍が無理矢理、駐留していたからだ」というのは間違いだ。日本社会党などの一部の政党は「アメリカ軍、でていけ」と言ったが、日本人の大多数が支持した自民党は終始一貫、アメリカ軍の駐留を認め、さらに日米安保条約を保持した。
つまり、日本人は「憲法を守らない」ということを70年間、世界に向けて発信して、日本流の「本音と建て前」を使い分けていただけとも言える。
長く平和運動をしてきた社会党系の代議士にあるとき、「軍隊がなくて、どういう方法で守るのですか。他国の軍隊が日本に入ってきたら、どういう方法で防ぐのですか? それとも皆殺しになってもあきらめるのですか?」と聞いたら、答えは返ってこなかった。つまり、社会党支持者も含めて日本人全体が二重人格だったという厳しい見方もできる。
「それ以外に方法がなかった」というのが正解だろう。平和憲法は守る、でもそれでは他国からの脅威に対抗することはできない、だから矛盾した状態をそのまま認めるのが良いという高度な判断が日本社会にあった。
私たちは平和憲法で日本を守ってきたのではなく、集団的自衛権を行使して日本を守ったという事実を認めた方が良い。そしてこの判断は結果的に正しかったのだから、やましい気持ちを持たずに正面から認めることによって次の政策を決めることができる。
(平成27年7月4日)