山下大将がイギリスのシンガポール要塞を陥落させたことは、これから1000年後、白人支配が終わって世界が本当の意味で平等になったときに、20世紀最大の偉人として歴史に名を残すだろう。

20世紀を終わった直後の現在では、「悪い人」に分類されているヒットラーやスターリン、「よい人」とされるチャーチル、ルーズベルトも一緒に「人間を抑圧した指導者」ということで山下大将とは比較にならないほど下位にランキングされるのは間違いない。それが「歴史的事実」だからである。

山下大将は日本が戦争をすると決めたので、軍人として命令によってシンガポールを攻略したので、真の偉人は「日本が戦争することを決めた人」ということになるが、実は「決めた人は不在で、強いて言えば歴史が決めた」。

アレキサンダーがインドを攻め、シーザーが地中海帝国を作り、チンギスハーンとその子供たちが遠くモスコーを略奪し、ナポレオンとヒットラーが辺境の地モスコーを攻撃したのはすべてその当人がやったものではなく、歴史がやらせたものだとされるし、それはまっとうな見方と思う。

戦争に入る前の昭和16年春。すでにイギリス、フランス(一時的に、国自体もなかった)、オランダは力を失い、アジアの覇権・・・つまりアジア諸国の不当占領(植民地)を維持する力はなく、東アジア方面で日本の敵にはなり得なかった。それは実際に戦争が始まってすぐにも判明したことでもある。

そこで「白人代表」になったアメリカは、「白人がやってもよいことを有色人種はやってはいけない」という論理を振りかざして日本を追い詰めてきた。現在の「反日日本人」が声高に主張していることで、イギリスはインドを、フランスはインドシナを、オランダはインドネシアを、アメリカはフィリピンを占領しても良いが、日本が満州を属国にすることは許されない・・・という論理である。

アメリカは日本の市場と中国におけるビジネスを比較し、中国の方が儲かるという結論を得て、中国と内通して日本を後退させることにした。当時、アメリカはヨーロッパのナチスの台頭が心配で、太平洋の方のゴタゴタに巻き込まれたり、まして「正義のため」にアメリカの若者を犠牲にするなどという考えはまったくなかった。

当たり前のことだが、現在の世界でも「正義」は後でつけるものであり、最初に「正義で自分の国が犠牲になる」という政策を採るのは日本ぐらいのものである。

日本が先に開戦したか、開戦すると同様のことをアメリカがやったかは歴史学者や政治学者が詳細に研究している。でも紛れもない事実は昭和16年の夏の石油やくず鉄の禁輸から、開戦前夜のハルノートまで、「アメリカが遠い日本を不必要に追い詰めた」ということは確かである。

なぜ、アメリカは「不必要」なのに日本を追い詰めたのだろうか? ある女子高校生が「日本はなぜ戦争をしたのですか?」という質問にその場の大人が答えられなかったと言われるが、まさに「アメリカが日本を追い詰める必要性」を理解していなければ答えられない。

(平成2763日)