歴史を知る001で「日本以外の国では歴史は現代のために新しく創造される」という原理原則を書きましたが、もう一つ、日本人が気がついていないものに「歴史には人種差別が入っている」ということです。

一つの例を示したいと思います。

私たちが日本の学校で歴史を学んだとき、全員が「「平等」という考え方は1789年のフランス革命の時にできて、それ以後、選挙も行われるようになった」と先生から習います。つまり民主主義はフランスが最初と言われています。

学校で先生から教えられるのですから、私もその時には「フランスって、すごいな」と感心したものでした。まさか先生がウソを教えているとは思いもよらなかったのですが、長じて自分で歴史を勉強してみると違うのです。

マホメット(ヨーロッパ読み。アラビア読みではムハンマド)が632年に他界した後、イスラムの教えは「神の前に平等」ですから、「階級、王様、身分」などがないのです。そこで、みんなで選挙で指導者を選ぶ時代がありました。それが「正統カリフ時代」と呼ばれるもので、今のアラビア半島、エジプト、イラクあたり全部の大きな国が「選挙制度」をとっていたのです!

あまりにムハンマドの思想が新しかったので、この選挙制度は30年でなくなり、ウマイヤ朝という「王様(カリフ、後のスルターン)」が復活しますが、それでも、これほどの大きい国が30年にわたって全員が平等で選挙をしていたということは「世界的で先駆的なもの」といえるでしょう。フランス革命はそのまねをしただけです。

この頃は、平等思想が行き渡っていましたので、イスラム教の軍団がエジプトやパレスチナ(ユダヤ教やキリスト教)、ササン朝ペルシャ(ゾロアスター)などの地域を占領しても、イスラム教を強制することはありませんでした。

もともとゾロアスター、ユダヤ、キリスト教などはすべて根元は同じであるとのイスラムの教えもあったので、それを尊重したのです(税金のかかり方だけが違った)。

ここではイスラム教のことを詳しく整理するのが目的ではなく、なぜ日本の学校が「平等」とか「選挙」がヨーロッパから始まったかのように言うのは、「白人のやることは正しい。同じことを有色人種がやっても取り上げないか、別の解釈をする」という「白人の人種差別の歴史観」のまま子供に教えているからです。

白人が自分の都合の良いように歴史を書き換えるのは、白人にとっては正しいことで、「歴史とは自分に都合の良いように書き換えて良い」という大原則があるからです。でも日本人は世界で唯一、「事実は事実」と考えるので、日本人に教える時には、「平等と選挙で代表者を選ぶ」というのは632年の正統カリフ時代に始まったと教えるのが適当でしょう。

今、日本の中では「日本の侵略」などを巡って、意見の対立がありますが、その根元に「作り替えられた歴史」があり、次に「人種差別の歴史観」がありますから、それらをまずは一掃してから議論を始めた方が良いと思います。

(平成2744日)