このシリーズでは、私たち日本人がこれまであまりなじみがなかったイスラムの世界を理解したいと思って始めました。最初の6回は主に「宗教」というものに焦点を当てて、イスラム教の全体像と日本人の宗教観と言うことを整理しました。

時に日本ではイスラム教は「特殊な宗教だ」と思っている人が多いのですが、仏教、キリスト教徒その根元を同じくする宗教であること、成立したのが比較的最近であることから、合理的な教えが多いことなどを紹介しました。特に「僧侶も教団もない。信者はすべて神の前に平等」という大きな柱には驚いた方もおられると思います。

一方、日本人は日本人の宗教観を普通のものと思っていますし、それが正しいと信じている人も多いのですが、日本人の宗教観は日本の風土や歴史に大きく左右されていて、必ずしも世界の一般的な宗教観とは違うことも私たちは外国を理解するときに気をつけなければならないと思います。

ところでイスラム教を深く理解するためには、イスラムの歴史を若干知っておく必要があります。というのは日本の歴史の話はそのほとんどが日本、ヨーロッパ、中国の3つで、世界の他の国の歴史はほとんど知らないというのが平均的な日本人だかからです。

もちろん、北アメリカの歴史と言っても白人が上陸するまではしっかりした国家がありませんでしたから、学ぶべきことも少ないのですが、イスラムやインドは長い歴史を持ち、むしろヨーロッパなどより早く、高度な時代もあったのです。それらがなぜ日本の歴史教育や報道に登場してこないかというと、日本の歴史学がヨーロッパ人から習ったものであり、イスラムは敵対していたのであまり触れず、インドはよく分からないので詳しくないという特徴があるからです。

「十字軍」という軍隊がヨーロッパから10回ぐらいイスラムの国を侵略したことは多くの人が知っていますが、当時のイスラムはヨーロッパよりかなり進んでいて、十字軍の侵略が後のイスラムの知識をヨーロッパにもたらすことになり、ルネッサンスが始まったのですが、これも別の説明をされることが多いのです。

さらにオスマントルコの時代になりますと、ヨーロッパの代表的な都市であるウィーンが陥落寸前まで追い込まれ、ヨーロッパ人は恐怖におののいたのです。もっともオスマントルコの前に大きな帝国を作ったウマイヤ朝の時には、イベリア半島(スペイン、ポルトガル)は全部、イスラムになったのですから、ヨーロッパとしては、南はスペイン領、東はオーストリアのあたりまで、常にイスラム諸国に脅かされていたのですから、反感も強いのです。

ところで、イスラム教を理解するときに、イスラムの歴史を知る必要があるのは、一つにこのヨーロッパとの関係がありますが、別に、「なぜイスラム教が急激に信者を増やしたか?」と「イスラム教の国家はなぜ強くなったのか?」を理解しておくことが必要です。

次回から、イスラム教の急速な発展の理由、それにイスラム教の国が強かった理由などを整理して行きたいと思います。

(平成2738日)