少し前まで「内風呂」といって家庭に風呂があるのはお金持ちの家だけで、庶民は銭湯に行っていました。町の銭湯は普通は午後の4時頃に空いて10時頃には閉まるというのが普通でした。

その頃の生活は、道路は舗装されていませんし、肉体労働が多く、一日の労働で体は汚れたので、なにしろ風呂に入ってさっぱりしないと寝床にも入ることができなかったので必然的に風呂は夕方に決まっていたのです。

日本の高度成長が始まり、第一期が終わった1970年代にはどの家庭にもガス風呂がついて、寒い中を銭湯に行かなくても風呂に入れるようになったのですが、同時に道路は舗装され、仕事は室内で行うようになって、夕刻になっても体は汚れていないという人が増えました。それに「風呂」ではなく「シャワー」でも十分に満足できる若い人も登場して、朝シャンが流行になりました。

夜は疲れているので風呂もシャワーも嫌だという人でも、朝は元気ですからとても気持ちの良いものです。昔から「朝風呂は身上を潰す」というぐらいクセになるほど気持ちがよいということです。

しかし、最近、朝風呂や朝シャンはあまり好ましくないとされています。第一に表紙に示したように朝は血圧の変動が激しく、とくに冬は脱衣所の気温が寒いので、きわめて危険です。朝起きて血圧が安定するまでには一時間ぐらいかかりますし、普通の人は出勤などの仕事モードになってしまいますので、どうしても起きがけの風呂ということになりきわめて危険です。

第二に、シャンプーをすると髪が痛むので、そのまま外出して風に吹かれたり、直射日光を浴びるとますます髪が痛むことも挙げられます。シャンプーの基本は「頭皮を洗う」ということで「頭髪を洗う」のではありませんが、ついつい頭髪まで洗ってしまいます。

つまり、血圧の危険と髪が痛むというダブルパンチを受けるのが朝風呂、朝シャンなのです。もともと朝シャンという言葉自体が女子高校生から流行し、さらにシャンプーメーカーがそれを宣伝したという、あまり感心しない流行だったのです。

ついでに風呂の危険を数値で示しますと、家庭の中で風呂で死ぬのは結構多く、そのうち、心臓死が50%、脳血管障害が38%でかなり多いこと、その他に状態としては貧血などでクラクラして意識を失いおぼれて死んだり、お酒を飲んでいる場合も危険が増大します。

(平成27130日)