未成年の事件が二つ続いて起こった。一つは、コンビニの食品に爪楊枝を差し込むような映像をネットに出した少年、もう一つは宗教の勧誘の老婦人を殺害した少女である。

民主主義での法律というのはお上のお達しではなく、国民の間の合意だから、日本国民ならだれでも守る必要がある。法律を改正する意見や運動は大いに盛んにやれば良いが、自分の考えが現在の法律と違うからといって、法律を無視してはいけない。

さらに、政府の要人、警察関係、報道関係、有識者などは、法律を守らせることを国民から委託を受けたり、道徳的なコメントをするのだから、尚更、法律を守る必要がある。

ところで、少年の事件の方は、少年がネットに出した映像があたかも「実際にコンビニで食材に爪楊枝を入れたり、万引きをしたように見える」というもので、それをテレビが大々的に報道した。少年もそれを逆手にとって羽田、成田、名古屋近辺と移動して映像をとり、社会をからかうような言動を繰り返した。

そして数日後に逮捕されたが、その逮捕理由が「建造物不法侵入」で、具体的には「コンビニに買い物以外の目的で入った」という説明がついていた。私は「別件逮捕」と思う。コンビニに買い物以外で立ち入る人は多い。トイレを借りることもあれば、いざという時にコンビニでお金を下ろせるかどうか下見をするのもあるだろう。

今やコンビニは夜間は暴漢や付きまといから逃げる場所としても公に利用することが認められている。だから「買い物をする目的以外でコンビニに入ったら逮捕」というのはいかにも稚拙で、かつ暗い社会を思い起こす奇妙な事件だ。

でも、問題はこの逮捕を「いたずらする少年だから逮捕は当然だ」という法律を無視した意見をあたかも「道徳的」なコメントとして言うテレビ局が多かったことだ。法律を守らない人が道徳的なことをいっても、それはその人の独自の判断で、そんなものを公に言っては法治国家が成り立たない。

この事件も未成年だから問題がもう一つあるが、19歳の少女の殺人事件では、テレビや新聞は明らかな少年法違反をして、少女の大学、郷里、その他の情報を流した。明らかな少年法違反であるが、ネットで情報が出ているからという理由でNHKが流し、各局はそれに追従する形だった。

(少年法第六十一条)

「・・・氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」

でも、ネットが「違法な情報」を流したからといって、それが「情報を流す正当性」になるわけではない。ネットよりNHKの方が法律を守る姿勢が求められるのは当然である。

私がこれを主張すると、「もともと少年法がおかしいのだ」ということをいう人も出てきた。少年法を改正する動きはかなり前からあるが、まだ改正されていない。改正されていなければ、個人が改正すべきと思っても、少年法の対象者を勝手に対象から外すわけにはいかない。

「君は殿様でも神様でもないのだ」と言いたくなった。このところ、日本社会は「うざい」で見られるように不良少年、すぐ考えるのが疲れる子供とほとんど同じになってきたようでガッカリだ。私は日本人の正直さ、真面目さ、誠実さを信じているが、最近、少し揺らいできた。

(平成27130日)