かつて食中毒は夏のもので、冬は冷蔵庫がなくても食品が傷まないので食べ物でお腹を壊すということはほとんどありませんでした。しかし、最近ではノロウィルスに代表されるように12月、1月に爆発的に流行する食中毒があります。

なぜ、食品が傷まない冬に流行するようになったのでしょうか? それは「傷んでいない食品を食べて激しい下痢を起こす」という今までの常識では考えられないことが起こっているからです。

ノロウィルスは、患者さんの便の中にあって、それが水洗トイレで下水処理場に行きます。下水処理場では濾過をしたりして細菌などを除きますが、ノロウィルスは丸い形をしていて40ナノメートルととても小さいので、下水処理場では除くことができず、そのまま川から海に流れていきます。

都合の悪いことに、ノロウィルスは簡単な体の構造をしているので、淡水でも海水でも平気で生きているので、川から海に流れてもなかなか死にません。増殖はしないのですが、そのまま海に漂い、二枚貝の体に侵入します。

そこでまた厄介なことにはノロウィルスは二枚貝の中でそれほど繁殖をせず、毒素も出さずにいるので、「二枚貝は健康で新鮮」という状態で海から陸に移動します。浜のせりにかけられる二枚貝は、ノロウィルスにかかっていても罹っていなくても、同じく新鮮ですから、区別がつきません。もしノロウィルスが二枚貝の中で繁殖して毒素でも出してくれれば浜で除かれますから、食卓までこないことになります。

それがそのまま魚屋さんで販売されたり、お寿司屋さんで出されたりします。どんなに衛生的で新鮮な魚しか取り扱わない魚屋さんでもお寿司屋さんでも「ノロウィルスに感染した二枚貝」を区別することができないので、防ぐこともできないというわけです。

つまり、ノロウィルスにかかるのを防ぐ手段は、冬に二枚貝を食べないか、煮たり焼いたりしたものしか食べないということしかできません。繰り返しになりますが、「新鮮なもの、腐らないように注意する」というのはなんの防御にもならないということです。

どうしてこんなことになったのか、それは「ノロウィルス」を想定していない集中型下水処理にあります。かつてなら肥溜めのようなものがあって、海に直接ながれていくことはなかったからです。だからといってまだ下水処理施設ではノロウィルスを除いたり殺したりできないので、ある一定のウィルスが流れていくると、流行を拡大することになるからです。

つまり、ノロウィルスによる食中毒は、不注意で起こる病気ではなく、環境によってもたらされる水俣病のようなもので、水俣病が水銀、ノロウィルスはウィルスということなのです。さらに厳しく言うと、下水処理場はまた二枚貝に入って帰ってくることがわかっているのに「ノロウィルスを垂れ流している」ということです。

下水処理では「仕方がない」と言っていますが、「激しい下痢をする人が出るに決まっている」という操業を続けているのですから、早期に解決しなければならないと考えられます。

(平成2717日)