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良い受賞でした。物理学には素粒子分野と物性分野があり、このところ交互にノーベル賞の受賞者を出していますが、今回は日本の得意分野の物性(今回は半導体)の研究での受賞となりました。

半導体というのは、結晶の中に電子とか、電子と反対の性質を持つ正孔(ホール)が「半分、電気を通す」というもので、ゲルマニウムで最初に使われ、現在ではシリコンが主流です。1947年にショックレーが点接触型半導体素子を作ってから、急速に利用され、トランジスタラジオに始まり、計算機、集積回路、携帯電話などあらゆる分野へ応用が広がりました。

電子分野以外では、発光素子・・・今回のLED照明、太陽電池などがあり、電気を光に変えたり、光を電気に変換したりすることができます。LEDの素子自体はすでに1962年にニック・ホロニアック博士が発明したもので、それから徐々に進歩して、最初は赤の色だけだったけれど、今では青色ができてどんな色も出せるようになりました。

ニック・ホロニアック教授がノーベル賞を受賞しなかったのはやや不思議ですが、日本の受賞者はいずれも立派な人です。

赤崎先生は窒化物半導体を研究され、青色ダイオードのもとを作ったかたです。もちろん研究は段階的にしか進まないので、先生の半導体は光が弱く、寿命も短かったのですが、その赤崎研究室の学生だった天野先生(現、名古屋大学教授)が実験に成功したのです。

それを見て、徳島大学から会社に就職していた中村さんが結晶の製造方法に取り組み、実用的な素子を発見しました。天野先生は一年に1500回の実験をくり返し、装置が不調の時にはじめて成功したといわれますし、中村さんも失敗に失敗をくり返し、その時に企業の社長さんが頑張ってくれて、ついに成功したのです。

研究というのは成功するか、失敗するか、賞を取るか取れないかは別にして、すべて苦しいもので、失敗の連続です。願わくはまだ完璧ではない時に「そっとしておく」ことが大切なこともわかります。

また、青色ダイオードの研究で他の化合物を研究した人は全滅したのですが、それは「見通しが悪い」ということではなく、赤崎先生の運が良かったということと思います。同じ目標をもつ研究を10人で始めたら、そのうち運の良い人が成功します。というのは。研究をスタートするときには何をしたら成功するかは誰にもわからないからです。

日本の物性物理、半導体は江崎玲於奈先生のトンネル効果の発見から、常に世界のトップレベルにいました。そのことが今回の受賞につながり、多くの研究者の成果の集積と感じます。

(平成26108日)