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自分が住む家を作る場合、昔は、日本なら樹木を切って製材し、それを組み合わせて「木造」の家を作るか、もう少し前なら地面にすこし穴を掘って土間にして、その上に樹木の枝で屋根の基礎を作り、その上に藁をしいて雨を避けました。

アイヌなら、これも樹木で家の骨格を作り、そこに「ササ」で壁や屋根を作ります。ササは茎の部分を縦にして縛り付け、長さが30センチほどの葉を水平にして外に伸ばします。アイヌが住んでいた地域はとても寒いので、家の基本は寒気を防がなければなりませんが、電気がない時代ですから、家の中では火を焚きます。

火を炊けば酸素が消費され、二酸化炭素が出ますから、暖を取ろうとして密閉にすると酸素不足で快適ではありません。そこで外に伸ばした葉が密集していて、「空気はとおるけれど、熱はその葉で交換する(熱交換の技術)を使用したのです。

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ついでに書きたくなりましたが、アイヌの家はチセと言いますが、部屋の中央に囲炉裏があり、そこでは夏でも火を絶やしません。それは夏のあいだに家の下に熱を貯め、それが冬に徐々に上がってくることによって一年中、ほぼ一定の室内を保とうとする努力だったのです。

ヨーロッパは地震がなく、空気も乾燥していましたので、家屋も石やレンガで作ります。日本は地震が多いのでレンガ作りが定着しなかったと言われますが、そうではありません。日本で作られたレンガ造りの家は丈夫で、全国に古い建築物が残っていますが、東京などでも明治時代に作られた建物が大正12年の関東大震災でも残っています。

日本でレンガ作りが定着しなかったのは、日本は湿気が多いことにあります。日本でレンガ造りの家に済むと梅雨の季節に結露してとても大変なので、なかなか普及しなかったというのが正しい解釈です。

ところで、ヨーロッパの家はイギリスで平均130年、ドイツで80年と言われます。ドイツは第二次世界大戦でかなりの爆撃を受け、それで立て直したところが多いので、ほぼヨーロッパの家は100年住宅と言えます。

これに対して、日本の住宅はもともと30年程度で立て替えますが、最近はマンションなどの進出で平均26年とも言われています。なぜ日本では100年住宅が立たないのか?かならずしも「木造」というだけではありません。

木造の建築物は案外丈夫で、奈良の法隆寺の金堂がそうですが、世界最古の木造建築物でほぼ1500年とされています。でも、その木造住宅をなぜ短期間で捨てていくのかというと、これも日本の湿気に関係がありそうです。アイヌは家の主人が死ぬと、基本的にはその家を焼きます。それは宗教的なこともあるのですが、「人間が死ぬということは病気があるということだから、衛生上、焼いて出直す」という説が妥当のように思います。

湿気の多い日本は「焼くのが基本」で、人間が命を失っても、台所から出るゴミも、お寺の落ち葉も、すべて焼くのが当然でした。それに対して乾燥しているヨーロッパでは「埋める文化」が誕生し、お墓には棺桶のまま埋葬し、なんでも埋めて土に戻します。

だからといって、ヨーロッパが「衛生的」だったかというとそうでもなく、歴史的に黒死病と呼ばれたペストを始め、人口が減少するぐらいの疫病の大流行が見られますが、日本は島国ですから強力な細菌やウィルスが流行すると全滅の危険もあるのですが、そんなこともなく2000年を過ごしてきました。

だからもしかすると「なんでも焼く、住宅もながく使わない、障子や畳も時々、新しいものにかえる」というのは、さまざまな日本列島の気候、風土、そして文化に根ざしているのでしょう。

私たち日本人という民族が、日本列島という場所で生活して、幸福な毎日を送るためには、どういうことを考えれば良いのだろうか?

(平成26915日)