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社会構造が異なるので、人の感覚というのはあてにならないが、台風も戦前のほうが激しい台風が多かったというのが日本人の感覚である。また21世紀に入った後も台風の数、大きさ、上陸数はともに減少している。
また、災害による犠牲者数は、災害自体の大きさと、それに備える社会の構造によってことなるが、日本では、自然災害(地震を除く)による犠牲者数はピーク時の年間5000人対して最近では100人から200人と極端に少なくなっている。
(注)戦前の統計は必ずしも完全ではなく、多くの自然災害統計では「戦前の統計はあまり参考にならない」とされている。従って、信頼性のある統計は戦後、特に1950年以後と考えて良い。
これに対してアメリカのハリケーンの被害は20世紀後半になって大きくなってきた。これについて日本の報道ではハリケーンの大きさを強調されているが、日本で「史上最大」と言われたカトリーヌは実は20世紀に入って6番目で、最大のハリケーンは1920年代だが、被害は最大になった。
これはニューオーリンズの都市構造や人種の問題、さらにはブッシュ政権の不手際が重なったものである。
また先のグラフは60年ほどの長い期間を採っているが、平成14年から10年間の自然災害による死者、住宅被害を調べてみると、新潟豪雨、福井豪雨、中越沖地震などが起こった平成16年に240人になったが、普通の都市は数10人であり、増えても減ってもいないという結果になっている。
このように台風も自然災害の犠牲者数も、20世紀の前半に比較して大きくなっているとは言えないが、最近のテレビを見ると明らかに「異常気象、異常気象」と報道している。特に、2014年の台風8号も50年来とテレビが絶叫していたのは、なぜだろうか?
まず第一に、テレビ局が東京に集中していることがあげられる。「街の声」となると、ほとんどが渋谷、新宿、それに新橋のサラリーマンが出てくるし、東京がコンクリートに覆われ、都市の弱さを露呈していることも原因しているようだ。そこで、東京の状態を調べてみた。
グラフは、東京都区部の洪水災害の件数と床上浸水率の関係を示したものだが、総件数からみると1960年代から1980年ぐらいまでは1年に5000件から7000件程度の災害が報告されているが、1980年代の後半から「気候が穏やかになったので」?!東京の洪水被害は大きく減少している。
報道自体は「テレビのヤラセ」ではなく、正しく報道されているとすると、「洪水災害は減っているが、床上浸水率が増えている(戸数は激減しているが、少ないながら率は上昇している)ことによると考えられる。
つまり、1960年代は災害の被害件数は8000件でそのうちの10%、つまり床上浸水した回数は800になっているが、2000年頃には洪水件数は200件ぐらいになっているが、床上浸水率は54%で、ほぼ100件ぐらいである。
つまり、1960年代から見ると現在は、洪水回数は40分の1、床上浸水件数が8分の1になっているが、率から言えば増えている。つまり「件数が少なくなっているので、目立つ」ということでテレビに出ているということと考えられる。
このようなことから、現在の「異常気象」という報道は、データから言えば、マスコミが作りあげた単なる幻想であるとも考えられる。こえは近年、メディア報道に見られる二大特徴・・・定量的に判断せずに情緒的に報道すること、温暖化など社会の空気に合わせて事実を軽視すること・・・の一つの現象ではないかと思われる。
そこでより慎重に多くのデータを調べ、本当に災害は増えたのか、自然は荒々しくなったのか、もしくはマスコミの作り話かを明らかにしたいと思う。
(平成26年7月20日)