・・・ああ、あんなこと言わなければよかった・・・人生でなんどそう思っただろうか
人には回復することができない言葉がある。口からでた音波は戻すことができず、相手の耳に入り、心を破壊する。破壊してしまったこころは二度と戻ることはない。
NHK会長が就任にあたって「政府が右と言えば右、左と言えば左」という放送をすると明言した。この言葉は、回復せざる言葉で、今後100回、この発言を否定しても、同じ人が会長である間は、NHKの報道は国営放送であると思う。
さらに、この発言から半年以上たっても会長が辞めないところを見ると、NHKは国営放送であることを日本社会とNHK内部で承認したことを意味する。この言葉は訂正することができない言葉であるからだ。
もう一つある。それは放送法との関係だ。放送法(もとの第3条と思うが)の第4条には、
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
とあるわけだから、会長の発言は「法律を破ります」と言っているのと同じで、NHKは順法精神を持たないことを宣言している。
つまり、この会長の発言は、NHKが国営放送になったこと、NHKは順法精神を持たないこと、の二つで、いくら撤回しても人の心を破壊した後だから決して、元には戻らない。その会長が半年以上も在任しているのだから、内閣も国会も司法も、NHK幹部も社員も多くの日本人も同意しているのだろう。
会長が替わらないのは安倍政権がNHKを国営放送にすること、法律軽視の2つで戦後の日本の体制を一気に変えようと思っているからだと解釈できる。自民党はもともと正々堂々と正面から選挙に勝って憲法を改正するのが立党趣旨だったように記憶している。
しかし、現在の自民党は原発の被曝隠し、集団的自衛権などで見られるように「民主的手続き」は日本では成立しないと考え、メディアと国会議員の数の力で「自民党が正しいと思っている社会」へと進もうとしていると考えられる。それにはNHK会長の人事はもっとも大切で、その人に「回復せざる発言」を求めていると考えるべきだろう。
民主党は選挙公約の主要部をすべて実施せず、増税など選挙公約と逆の政策を実施したという点で日本の民主主義を破壊したが、自民党は「メディアを手なずけ、法律を軽視する」という手段で民主主義を否定しようとしている。
根が深い。
(平成26年7月4日)