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日本人は約束を守る誠実な国民で、それは世界に誇ることと思ってきたが、原発事故から現在までの間に、日本人、特に指導層のもう一つの顔を見た感じがした。それは「都合によって約束を守らない」ということだった。

 

  1. 原発事故の前は専門家は「11ミリは当然だ」と言い、マスコミは「11ミリの100分の1でも許されない」と放射線漏れを起こした人をバッシングした。

  2. 原発事故が起こると、最初の数日は「11ミリ」とNHKは放送していた。

  3. 数日後には「11ミリなんていう法令などない」と言い出す。被爆に対して厳しい論調を展開していた朝日新聞は「被爆は大したことはない」という女性記者の署名記事を出す。

  4. しばらく経つと、11ミリという人はいなくなり、私に対してのバッシング記事が連続するようになり、テレビ出演もほぼすべてがダメになった。

  5. 2年ほど経って、ようやく11ミリが法令の規定であるということが行き渡ったが、なぜそれまで隠していたのかなどの論評はでなかった。

  6. 最初の段階では医師、次に放射線の専門家、最後に右翼系の思想家などが、「11ミリを守ることは日本のためにならない。かえって病気になる」などの意見が出てきた。
    私は当初、右翼の人は被曝に厳しいと思っていた。「日本の国土、日本の子供、日本のコメ」という日本を支えるもっとも貴重なものが汚染されるのだから、当然、反発すると思っていたら、逆になった。このことに対して、私は理由が見つからずに、右翼系の人に何人かに聞いてみたがはっきりしたことはわからなかった。
    現在、推定されることは、
    1)
    左翼が原発に反対しているので、その反作用として被曝は大丈夫と言っている、
    2)
    科学より思想が優先する風土があり、思想に沿った結果を採用する傾向がある、
    3)
    原爆が作れなくなると中国の攻撃を避けられないと思っている、
     
    などであるが、なかなか新なる理由を見いだすのが難しい。そのうち、これらに付け加えて
     
    4) 火力発電所に代えると日本の経済が破滅する、
     
    というのが付け加わった。
    このような考え方は、雑誌で言えば”WILL”, 尊敬できる人で言えば渡部昇一さんなどがかなり繰り返し述べておられる。なにしろ”WILL”にしても、渡辺先生にしても、見識ある雑誌であり、人物なので、軽んじる訳にはいかない。なぜ、11ミリの法令を守ろうとしないのか、先日、読者の方から渡部先生のまとめが来た。それによると、
    「野蛮国アメリカの原爆投下で虐殺された広島・長崎市民は、 原爆投下時点で熱線で死亡した膨大な被害者はいましたが、その後、市民は被爆後、引き続き福島の1700万倍もの放射能がある当地に住み続けてきたにもかかわらず、 今日、この地の平均寿命は、日本の他の地域よりも長い、がん発生率も低い」と言っておられ、第二の視点としては、
     mm基準で規制することは、国家の存立を揺るがすことになる。 我が国は左翼勢力の原発反対で原発を止め、現在、原発の代わりに火力で補てんし、その為に、我が国のエネルギー費用は、一日100億円、年間4兆円増加した。 防衛費を1,000億円としても、これは、この無駄なエネルギー代の10日分に過ぎない。いかに莫大な国益の損失かがわかる。」
    というものだった。何しろ見識の高い渡部先生のお話になったことだから、徒やおろそかにはできない。このことと法令で言う11ミリとなにとなにが違うのか、火力発電のコストと原子力にどのぐらいの差があるのかについて整理をする必要がある。
    まず被爆と健康だが、これは何回もこのブログで整理はしているけれど、
    1)
     学問的にははっきりしていない、
    2)
     法令では学問的に中間をとって「11ミリの被曝で、交通事故並みの犠牲者」と考え、これを国際基準である「日本人として我慢できる限度」としている、
    3)
     日本国としては、国立がんセンターが標準データとして、11ミリで、10万人あたり致命的発がん5人、重篤な遺伝的疾患1.6人としている。合計で6.6人だが、交通事故死は4人程度なので、それより原発の被曝が少し危険な程度である、
     
    ということだ。
    「左翼思想」の方は、ドイツなども同じだが、
    1)
     人間のがんの多くは放射線の被曝によるものである。もし自然放射線も含めて被曝が少なくなればがんは減る、
    2)
     医療用被曝も減らした方が良く、その証拠にヨーロッパに対して日本の医療被曝が4倍程度あり、それに応じて医療が原因とされるがんも4倍近い、
    3)
     広島、長崎、チェルノブイリなどの被害はきわめて広範囲で甚大だった、
     
    というものである。
    これに対して、「被爆は大したことはない」という学者などの意見は、
    1)
     広島、長崎の被害は大したことはなかった、
    2)
     放射線の被曝は免疫系などを活性化し、むしろ寿命を延ばす、
    3)
     左翼の人は見えない放射線の危険をあおって、女性を脅かしている、
     
    というようなことが中心になっているように思う。
    私は「科学はわからないものはわからない。本当は被曝と健康に関係がわからない間は原発をしない方が良いが、どうしてもしなければならなければ「約束」をするしかない」という考えだ。わからないものはわからない。そして科学は思想ではない。だから、わたしは科学でわからないものを「危険だ」とか「安全だ」というわけにはいかない。ただ「法令(国民の約束)で決まっている通りにやろう」と言っている。
    だから左翼の人も、偉大な渡部先生も危険か安全かわかるはずはない。どんなに偉い人でも、科学でわからないことはわからない。私は、なぜこんな簡単なことが日本で理解されないのだろうかと疑問である。科学的にわからないのに、ある人は危険と言い、ある人は大丈夫という。ということは他のことも「根拠なく」言っているのだろうか? それとも、専門家でも人によって違うことを言っている場合、自分は神様で、どちらが正しいかわかると考えているのだろうか?
    人知でわからないのだから、わかる方法はないと思うのだが。
    (平成26611)