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”11ミリという被曝限度が法律で決まっていることは理解したが、この規定は日本のためにならないという論理が日本の指導層などで広がっている。このことについて考えてみたい。

 

福島原発の爆発の前、「一般人の被曝量の限度は1年に1ミリシーベルト」と法令で決まっていて、ほとんど誰も注意をしなかった。しかし、この数値は本当は大切で、私たちが原発など原子力施設を運転するに当たって、「どこまで被曝を許容するか」の約束になっていた。電力会社はこの約束を守るということの元に原発の運転をしていた。

 

原発の運転の経験が長くなって、今から25年ほど前(1990年)以前は、原発作業員は120ミリシーベルトを限度としていたが、作業員に白血病がでる。それを労災(原発作業が原因)に認定され、裁判でも同じ判決になったことから、電力会社は1990年から自主的に作業員の被爆を「平均11ミリ」にするように内部で指導してきた。

 

この時点で電力会社は、従業員の被爆限度を11ミリに下げたものの、本心は「裁判所が間違っている」と思っていた節もある。ただ、次々と白血病の労災認定を受けると面倒であるし、また裁判で「15ミリの被爆で白血病にならない」という科学的証明ができなかったという「敗北」でもあった。

 

そして、爆発はしないと思っていた原発が震度615メートルの津波で爆発し、付近住民の被曝量は11ミリを大きく超えるようになる。その瞬間、つまり2011312日午後430分のNHKの放送では、アナウンサーは正しく「一般人の被曝限度は11ミリシーベルト」と言っている。これは証拠をつけて次の私の本に詳細(アナウンサーの一言一句)を示す予定だ。

 

ところがまもなくして、「法令にそんな規定はない」という「ウソ」に変わった。これはおそらく政府の圧力か、もしくは電力会社などが意図的に間違いを流したものと思われる。その頃、「武田が11ミリと言っているがそんなことは法令に書いていない」と言っている人を知っていたし、社民党の福島党首に会ったら「法令に書いてあったら良いのですが」と同じことを言っておられた。宣伝が行き渡ってきたのだろう。

 

その後、週刊新潮が「11ミリシーベルト男、武田邦彦」という記事を書き、そこには今まで原子力で私と一緒に仕事をしてきた人たちが、「武田はとんでもないことを言う」と言っていた。それを見て、日本人というのはこういう性質も持っているのか!とがっかりしたものであ

 

ぼ日本の官庁は統一し、練馬区などはホームページに「1100ミリ」ということを書いて公表していた。

 

2013年になって、法令に書いてあることを隠し通すことができなくなり、社会は11ミリを被曝限度としていたことを認めるようになる。わたしは何も望まないが、正義を掲げてきた新聞などはやはり筋を通して、「武田が言っていたことが正しかった。我々は圧力に負けた」と言うべきだっただろう。

 

それはともかく、法令で11ミリと決まっていることが否定できなくなると、今度は「11ミリと決めたことは、左翼の陰謀だ」というのが出てきた。次々といいわけが出てくるものだと感心したが、それが主として日本国を愛していると思っていた右翼系の思想家などからもより強く出てきたことに私はややびっくりした。

 

つまり、
1)
事故の最初は11ミリと認めていた、
2)
すぐ、11ミリなどどこにも書いていないに変わった、
3)
次に、11ミリと言っている奴はおかしいとバッシングをした、
4)2
年経って、11ミリが法令で決まっていると認めた、
5)
そうなると、11ミリの規定は日本を滅ぼすという論理を持ち出した、
 
ということになった。

 

そこでこの記事では、5)が本当にそうかということについて「相手の立場(右翼系思想家)にたって」12回にわたって考えてみたいと思う。

 

(平成26612日)