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このシリーズの1回目は「防護服」という簡単なものだったが、2回目は「借金」という難しい用語を整理してみたいと思う。ついこの間まで「借金」というのは「人からお金を借りること」だったが、最近はマスコミが「人にお金を貸すこと」を「借金」というようになって、なかなか言葉の使い方が難しくなってきた。

消費税の増税問題が起こってきた数年前から、主としてNHKが中心となって、「国民一人あたりの借金は800万円。このままでは子供たちにツケを回すことになる」と報道し始めた。23人の経済評論家などが用語の使い方が適切ではないと指摘していたが、最近もまたNHKが「借金」という言葉を使っていたので、ここで取り上げることにした。

現在、「日本国」は外国に対して約240兆円の「純資産」(資産から負債を差し引いたもので、個人などでは貯金や土地にあたる)を持っていて、世界でダントツに外国にお金を「貸している」国である。

それに対して「日本政府」は、国民から主として国債(国の借金証書)を発行して、約1000兆円を借りている。この国債は外国人も買うことができるけれど、ほとんど(95%ぐらい)は日本人が買っている。だから日本政府は国民に対して1000兆円の借金をしている。

これを国民の方から見ると、国民一人あたり外国に約200万円の資産を持ち、日本政府に対して約800万円を貸しているということだから、NHKのいう「国民一人あたり800万円の借金」というのは正反対の表現である。

また、消費税を上げるのに賛成した人の中には、NHKの放送を信じて、「子供たちのために自分たちが借金を返しておかなければ」と思った人もいるけれど、私たちは子供たちに借金を残すのではなく、貯金を残す。だから、子供たちはお金に困ったら日本政府に「貸したお金を返してくれ」といえば800万円が返ってくるのだから、消費税を上げる必要はない。

日本政府が国債を発行するときに、「国債を買うと、財産になります。しかも国が発行するので元金は保証されています」という。もしこれが本当なら(本当だが)、国民一人あたり800万円の国債の債権が手元にあるのだから、それは明らかに「借金」ではなく「貯金、債券、資産」と呼ぶべきものである。

それでは、これほどはっきりしているのを、なぜNHKをはじめとしたマスコミは「借金」と表現し、それを糺すべき政府も黙っているのか? そこには深い日本の闇がある。また、日本人がこの言葉の魔術を理解できないのは、日本の文化は「借りたお金は返すのが当然だ」と思っているからだ。外国には「借りたお金は返さないでよい」という文化の国もあり、日本の新聞などの論調には、「借りたお金を返さないとは!!」との批判が見られるが、こともあろうに日本政府が返そうとしていないのを指摘するのに躊躇している。

(平成2663日)