(このシリーズは一般の方が少しでも自分の健康を知り、お医者さんの話をより正しく理解するためのもので、医師が行うインフォームドコンセントの患者側の勉強を目的としています。)
さて、少し話が変わりますが、人の寿命はなんで決まっているのでしょうか? かつてローマ時代には平均寿命は25歳だったのに、なぜ今は80歳なのでしょうか? 世界の中には平均寿命が50歳ぐらいの国も多いのに、良い国に生まれたものです。
動物の寿命は、まず第一に体の大きさ、第二に頭脳の大きさ、で決まります。体の小さな昆虫などは1日も生きることができないものも多いのに、ゾウやクジラなどの巨大な動物は数10年も生きます。これは心臓の鼓動回数とか体表面からの放熱量などの物理的なものが関係していると言われています。
第二に頭脳が大きいこと、文明が発達している方が平均寿命が長いのも確かです。動物でも頭脳が大きい(ビット数)ものの方が長生きですし、人間は体の大きさに比べると断然、頭脳が発達しているので、他の動物より長寿です。また同じ人間でも文明が発達している方が長生きです。
これは「より合理的な生活をするから」、「危険を未然に防ぐことができるから」と考えられ、知恵をつけることが長寿につながると言っても良いでしょう。
もう一つ、とても重要なのは「社会に貢献すると長寿になる」と言うことです。動物、特に人間のような集団性を持つ動物は、「集団性を持つ」と言うこと自体が一つの個体<一人の人間>だけの命ではないことを示しています。
人間は、人間として、日本人として、郷里の一員として、家族の一人として、生きています。だから、人間でもなく、愛国心が持たず、郷里に郷愁を持たず、家族を愛していない場合、生命力が衰えるのは仕方がないことです。
これこそ長寿の根源ですから、今後も整理をしていきますが、大きなことが二つあります。それは「なぜ、人間の女性が閉経後も生きているのか」ということと、「独身男性の寿命は短い」と言うことの2つに良く表れています。
詳しいことはすでにブログにも書いていますが、哺乳動物で人間の女性だけが閉経後も生きているのは、孫や他人のお世話をすることによって体が若返ることが知られていて、そのことによって哺乳動物の中で人間の女性だけが生き残って元気だということが分かっています。
また、男性の独身者はかなり早く死ぬのですが、これは一夫多妻制の動物のはぐれオスの寿命が短いことに対応していますし、小学校の男の子が、「警察官になりたい。世の中の役に立ちたいから」と答え、女の子が「AKBになりたい。注目されたい」と答えるのにも現れています。
男性は子供を産めないので、社会の役に立たないと生きている意味を失い生命力が低下します。また女性は子供を産み、育て、お世話をすることに世って生命力を保つことができます。男性は社会のため、女性は家族のためと言うのは人間の体の構造からくるもので、男女同権と言う問題とは質が違います。
つまり自分の健康は他人のためになることによって得られるということになり、それが最も大切なのでしょう。中日新聞の対談である医師が「自分のいのちは、自分の所有物ではない」と言われましたが、その通りなのでしょう。
その時に先生が最後に示されたのがこれですが、ややお若い先生なので、まだ表現は枯れていませんが、「自分と誰かを幸せにする選択を心がけよう」、「心静か」、「勇気」、「慈悲」、「感謝」などはいずれも自分だけのことではないこともわかります。
頭の中で考えることと、もともと動物としての人間がどういうものかと言うこととは違いますし、私たちは確実に「動物」ですから、そのことを健康や寿命を考える時には考慮に入れなければならないと思っています。これは「価値観」ではなく、「事実」なので、やや考えるのが辛い人がいることもわかっているつもりですが、ダーウィンが言ったように「真実を知るには勇気がいる」のであり、結局は真実をしている方が健康で長寿だということも事実です。
なぜ人間の寿命が決まるのかという研究がさらに進むことを期待しています。
(平成26年4月30日)