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先回の(1)で、過去の地球の気温には大きく言って2つあり、一つは従来から出されている論文群で「過去の気温は上がったり下がったりしていて、現在は過去3000年の平均程度」というものと、もう一つは温暖化騒動が起きてから出された論文で「過去には気温の変化がほとんどなく、20世紀になって急上昇し始めた」という内容であることを紹介した。

 

しかし日本の専門家やマスコミは、圧倒的に多いそれまでの研究論文を無視して、IPCCと同じ論文だけを解説し報道した。そして2009年にクライメートゲート事件が起こって新しい論文が否定されたのに、いまだに「どうも誤っているのではないか」とされる論文を解説し、報道し続けている。

 

自然科学はなかなか真実が分からないから、正反対の結論になる論文があっても構わないが、解説や報道に際しては「できるだけ正しく伝える」と言うことが大切で、それがなければ論文が正しくても社会には間違った印象を与える。

 

第二回目は、温暖化が問題になった1980年代からの気温はどうなっているかということと、それを専門家やNHK、朝日新聞がどのように伝えたかを取り上げてみたい。

 

1970年代までは「近い将来、地球は寒冷化する」と考えられていた。気象庁の有名な予報官・根本順吉氏は、「氷河期へ向う地球」(風濤社 1973)や子供向けに、「地球はふるえる」(筑摩書房 1980)などを出された。この頃の学者の大半が寒冷化すると考えていたが、それは何もデータがなく、研究もしないでいい加減なことを論文にしていたわけではない。

 

ところが、1980年代になってアメリカの研究者を中心にして「温暖化する」という新しい学説がでて、その一人にNASAのハンセン博士がいる。現在の温暖化騒動の最初になった彼の1988年のグラフを示す。

 

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このグラフで細い実線(どんどん気温が上がっているもの)が「成り行きの世界気温」で、点線が「世界で一致してCO2を増やさないようにした場合」だった。ついでに説明すると、太い実線は「その後、現実にどうなったか(事実)」で、ほぼハンセン博士の点線と同じである。

 

つまり、1988年に提出された新しい論文、「CO2をこのまま出し続けると、地球の気温は上がっていく」という結果はすでに25年がたって、「間違っていた」と言うことが分かっている。中国やインドに発展もあって、世界のCO2排出量は予想を上回るペースで進んでいるが、それでも気温はほとんど上がっていない。つまり、すでに25年が経つので「温暖化の考えは、どこかに間違いがある」と言うことが分かっている。

 

地球が温暖化するという考えは、温暖化というのが政治的な課題になると同時に、学問の分野では強力な反証が次々と出されていた。そのもっとも大きなものが、「気象衛星で観測した上空の気温」であり、1978年から観測をし始めた上空気温は徐々に測定データの傾向が分かるにつれて、「変化なし」ということをはっきり示すようになる。

 

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これが気象衛星で測定されたデータだが、ギザギザしている上空気温はほぼ一定であることが分かった。このようなことから「地上で観測している気温は、都市化など別の原因ではないか」とされ、これが後に気温の測定値に1℃程度を人為的に加算して報告されるというスキャンダルを産んだ原因の一つになっている。

 

もう一つは海水温の変化で、戦争のあった60年ほど前にかなり水温が高くなり、その後、いったん水温はさがり、現在はほぼ60年前の水準にある。海の水の温度は空気に影響されにくいので、すぐには変わらないが、それでも「ほぼ一定」という状態が続いている。日本近海では特にこの傾向がはっきりしている。

 

このような時、研究者が謙虚なら、地上の気温が上がっているが、上空の変化は少ない、さらにはCO2の増大による気温変化は主として上空で顕著であるという研究結果から、温暖化は少し考えなければならないと思うだろう。

 

また、学問的には、今まで25年間の予測が完全に間違っていたのだから、今後、25年程度の予測には従来の方法を使えないということになる。25年を予測できないのだから、100年後など予測する元気がなくなるのが普通である。

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さらに最近、15年間は地球の気温の上昇が止まった。これが寒冷化の予兆なのかは不明だが、25年間の予測がまったく外れたこと、最近の15年間の気温は上がっていないことを専門家もNHK、朝日新聞もまったく指摘していない。

 

論文は新しいことを切り開いていくのだから、誤りは起こるが、過去のことは正確に整理できる。その論文が出ているのに専門家も解説せず、NHKや朝日新聞も報道しないということになると、論文の正確性などは問題外になる。

 

実は、温暖化になると予想していた専門家や、NHK、朝日新聞が、なぜ気象の論文を「事実」として使わないのか?ということは全く不明である。つまり、最近の論文論争にみられるように「論文は非常に正確でなければならず、その論文の意味していることだけではなく、隅々まで正しくなければならない」という専門家やマスコミの論調と大きく離れるからだ。

 

「専門家は御用学者である」と言えば一応の理由がある。NHKは政府が右と言えば右しか報道できないとすればこれも一応、納得できる。さらに朝日新聞は「温暖化キャンペーンをしている政治団体」とみれば理解が可能である。

 

もしそうなら専門家は学問の自由はなくなり、NHKは国営放送になり、朝日新聞は政治団体の登録が必要で、記者クラブなどからでなければならない。でも、そうでもなく、単に「気弱」なのかもしれない。

 

一度、「温暖化」の論文を紹介してしまった(1988年のハンセン論文)し、その時うっかり、自分が解説者であることを忘れて、研究者のように踏み込んで解説をしたので、その後、引っ込みがつかないという詰まらないことになったのかも知れないと思います。

 

最悪なのが、「確信犯」で、「温暖化は防がなければならない。だからデータを隠しても国民をある方向に誘導する」というので、それになると「やらせ」とおなじになり、「目的が正しければ、どんな論文を書いても良い」ということになるので、社会の正義は崩壊するだろう。学者がどんなに正確な論文をだしても意味がなくなる。

 

是非、温暖化防止の推進をしてきた専門家、NHK,朝日新聞は「なぜ、気温が上がっていないというデータを示さなかったのか」の説明をしたほうが、より合意へ進むとおもう。議論は合意を得るためのプロセスで、バッシングしたり対立をあおったりするために研究したり、議論したりするのではないからだ。

 

(平成26415日)