規模は小さいが、もう一つ、新しい年金制度を始める前に、改善しておかなければならないことがある。それはこの4月から始まる国民年金の「滞納者」に対する「強制徴収」である。
これまでのこのシリーズで書いてきたように、1)年金制度は最初から厚生省が使い込む予定で、2)現実にも天下り退職金などで大量の公金を消費し、3)回収の見込みがない(回収するなら税金で支払うしかない)融資を繰り返して90兆円が焦げ付き、4)積み立て型年金を賦課型にして少子化の問題にすり替え、5)現在は「年金で穴をあけても、増税して補てんすればよい」という政策をとってきた。
だから、まずは厚労省、政治家、専門家など甘い汁を吸った人たちが弁済してからやり直さなければならないのに、それを置いて「責任は年金を支払わない国民にある」とばかりに「強制徴収」に踏み切ろうとしている。
おそらくマスコミは国民の咎だけを責めるだろう。事実、今日の新聞には特集が載っていたが、そこには眼鏡をかけた真面目そうな女性が「納付率が向上しないと年金制度が信頼されません!」と言っていた。
年金制度の崩壊は、納付率が低かったわけではない。厚労省の職務怠慢と意図的な使い込みにあったのに、またマスコミは「見かけが正しいほう」を重視するだろうから、「国民は年金を払わなければいけない」という記事を書いていくだろう。
この問題はさらに少し付け足しておく必要がある。年金を収めるというのは「半強制的にお金を徴収する」ということだから、もちろん「滞納」がある。この滞納の中には、「ズルい人が滞納する」というのと、「お金がなくて払うことができない」というのがある。
また、長い間、お金を払い続けるというのは大変だ。サラリーマンのように一定のお金が入ってこれば別だが、年金とかNHKのように「お金がなくても払わなければならない」というのは大変だ。その意味で「お金がない時に節約できないもの」を社会から徐々になくしていく必要がある。
だから、税務署と言うのもなかなかむつかしい仕事で、払いたくないお金をいかに順調に集めるかというのに最大の努力を払っている。たとえば各地域には「法人会」と言うのを作って、普段から税務の勉強をしてもらい、税務署長が挨拶をして協力を呼びかけ、税理士という国家資格を作って税の徴収を正常に行えるようにする。
もちろん納税は国民の義務だから、私たちが積極的に払わなければならないし、税務署は仕事としてやっているのにみんなから「金をとられる」と恨まれる。それでも、ジッと我慢して税制度を正常にするように努力している。
また、いくら納税が国民の義務としても、国税庁の長官が「どうせ、国民から集めた金だ。手元に来たらかまうことはない、どんどん使ってしまえ」などと公言したらそれは大変なことになる。
ところが年金の場合は、「滞納した人にはどうするか」がほとんど決まっていない。今頃になって、「100円徴収するのに90円の経費が掛かりますから、滞納した人に督促することができないのです」などと言っている。
このことは1億円の滞納があったら、それを徴収する経費が9000万円だから1億円を回収しようとしても1000万円しか回収できないということになる。年金を払うのに「国民の良心」に期待していたということだ。
だから、4月から強制徴収→財産の差し押さえ、ということになる。でも、日本社会はそれを許してはいけない。その前にやることがある。
1)年金を始めたときに、崩壊は予定通りだったのか?(年金課長談話は正しかったのか?)
2)これまでの年金局長の退職金。退職後の報酬の公表、
3)90兆円の融資先の返還見通し(税金で補てんしないことが前提)、
4)以上のうち返還が適切なお金はまず政治家、官僚などのお金を受け取った人が返還すべきか、犯罪性はないかについて政府は十分に説明する。
まずは、それがあって初めて、国民に強制徴収が可能だろう。新聞は「保険料納付は義務」との前提だといっているが、それは「年金が正しく運用されていたら」ということで、横領のようなことがあった場合、そのほうから片づける必要がある。マスコミの正しい報道を期待する。
(平成26年3月2日)