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東京から名古屋に移って名古屋には「名古屋走り」というのがあることを知った。最初は「信号が赤になっても渡ろうとする」とか「路線をどんどん変える」から注意しなければならないと聞いたけれど、名古屋で運転していると、そうでもない。

 

名古屋の道路は広く、幹線道路では片道4車線は普通で、19号線などは片道6車線まである。そんななかを名古屋の車はあまり車線を変えずにそのまま走る傾向があることもだんだんわかってきた。

 

ところで、愛知県は交通事故死が都道府県でもっとも多く、警察などを通じてこのことが良く知られているので、「名古屋走りは危険で、だから交通事故死が日本一だ」とされることが多い。

 

はたして「名古屋走り」は危険なのだろうか? また交通事故死は「日本一」なのだろうか? とかく人のうわさはあてにならず、都市伝説のようなものだから、自分が口にしていうときにはデータを一度見なければならないだろう。

 

まず、愛知県の「交通事故死の数」だが、確かに平成24年度には愛知県の交通事故死は235人と多いのだが、これは「都道府県」を単位にするとどうしても人口の多い都道府県は交通事故死が多い傾向がある。私たちが「危機を感じる」というのは100人しかいない村なら一人死んでも大変だが、名古屋のように200万人もいる大都市ではどうしても交通事故は増える。

 

そこで、警察などの統計は別にすると、普通は「人口10万人当たり」などとして表示するのが普通だ。平成24年度の都道府県の人口10万人当たりの交通事故死の数を表に示した(ベスト10・・・事故死が少ない順)。

 

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東京は人口も多く、交通事故死もワースト5に入るけれど、「人口10万人当たり」ではベスト1だ。お金をかけて道路も整備していることもあって、東京、神奈川、大阪という大都市を抱えるところは比較的、交通事故死が少ない。

 

それと比べると愛知県は埼玉県などとともに少し多い。これは道路などは整備されているが、物流の車が通過する県なので愛知の場合でも静岡から愛知県に東名高速道路で入る車に重大事故が多い傾向にある。

 

しかし、ともかく愛知県は「ベスト10」に入っていて、実は「交通事故死」は「少ない県」なのだ。人口が少なく面積が小さい県は事故死が少ないのは当然で、愛知県のように車社会でかつ通過県にしてはかなり良い成績と言わなければならない。

 

それでは事故死に至らないような小さな事故はどうだろうか? 車線を変更することが多いといわれる名古屋走りでは車同士が接触する事故も多そうに見えるからだ。

 

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この表はワースト5だから、前の表はベスト10、こちらかワースト5だが、人口当たりの交通事故率を見ると、香川県、佐賀県、宮崎県といった南の件が多く、人口との割合ではほぼ1%(100人に1人)ぐらいだ。

 

これに対して多くの件は0.5-0.7%ぐらいだから、都道府県で10番目から30番目はちょっとした数字でランキングが変わっていて、愛知県はある時は11位、ある時は15位ぐらいのところにある。やや多いということは言えるけれど、「名古屋走りだから交通事故が多い」ということにはならない。

 

ところで、愛知県は人口当たりの死亡率はベスト10に入るぐらい良いから問題はないが、さらに死亡率を減らすのは、おそらく「酒酔い」か「スピードの出しすぎ」だろうと思って愛知県警の資料を見たら、意外にも死亡事故の原因では「酒酔い」はゼロだった。

 

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統計もこのぐらいになるとなかなかすぐ手に入らないが、道路の整備(たとえば急カーブや狭い高速道路など)を進めたほうが良いかもしれない。

 

日本人はとかく「みんなが言っていることを言いたい」という傾向があり、「名古屋走りは危険だ」ということになると「だから交通事故死が多い」となり、データも調べずに尻馬にのることも多い。

 

かく言う私も最近まで愛知県の死亡事故は「酒酔い」と「スピードの出しすぎ」と思っていたので、上の表を見たときにはびっくりして、今でも「本当かな?」と思ったりしているが、人間はあまり根拠なくあることを信じると、それと反するデータを見てもデータの方を疑う性質もある。

 

交通事故を減らすのは私たちの悲願だから、どんな場合でも正確に調査をして、間違いのない情報を社会に発信したいものだ。

 

(平成251214日)