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秘密法に反対の人も賛成の人も多くの日本人が感じていることがある。秘密法に反対の人は、賛成する人の気持ちはわからないというかもしれないが、同じ日本人だからおぼろげにはわかる。「前進」とは「対立点」を強調するのではなく、まずは「同意点」を探ることにある。

 

(注:法律は特定秘密保護法という名前だが、秘密は「特定」されるものだし、「保護」されないと秘密ではないので秘密法と呼ぶ。)

 

人間社会はすべて≪ダダ漏れ≫が良いのは決まっている。個人のプライバシーに関すること以外なら基本的にはオープンのはずだし、特に民主主義だから判断する国民に重要なことを知らせないでなぜ正しい判断ができるのかという基本的なことも考えなければならない。

 

しかし現実的には本来はいらない軍隊が必要なように国際的には秘密はどうしても必要である。それはあるいはアメリカの政策が間違っているのかもしれないし、中国が日本を占領しようとしているからかも知れない。だが、それも含めて現実だから、ある程度の秘密は必要であるという考えもあるだろう。

 

このような時私は「自分と考えの違う人の考え」をよく聞くことにしている。多くの人は「自分の考えと同じ意見」に耳を傾け、違う意見を聞くのを嫌がる傾向にあるが、同じ意見は聞いても進歩がなく、違う意見は自分の成長に役立つから、本来は違う意見を聞いたほうが良い。

 

現実的に国家に秘密が必要なら、秘密法は必要ということになる。その場合、今回の国会の議決で問題なのは次のようなことではないだろうか?

 

  1. 現在の法律で秘密がなぜ適切に守れないのか? 公務員は職務上の秘密を漏らすと罰則があるし、現実に沖縄密約でも公務員が罰せられている。

  2. 公務員、もしくは公務員に準じる人たちが知りうる秘密以外に法律で罰則を決めなければならない秘密はあるのか? 公務員以外の人で自分が知りえたことで何が秘密なのかを誰に聞けばよいのか? 罰せられる国民の範囲に限定はないのか? また、過去の発表作品、一般の人が普通の生活をして得られる情報をもとに何かの活動をしたときに罰せられることがあるのか? 常に一般人も検閲を受ける対象になるのか?

  3. 仮に臨時にあることを秘密にしても、できるだけ早くその秘密を公開する必要があるが、それは今回の法律のように30年とか60年ではなく、「あることがケリがついたとき」とか、「10年」ぐらいが適当だろう。たとえば、アルジェリアの人質事件が秘密法の必要な理由として首相が挙げているが、人質事件の犯人が殺され、事件が終わった後は直ちに公開されるのか?などが不明である。

  4. 「何を秘密にするのか」という重大な判断を行政の長が仮に行うのは良いとして、それが適切だったかを事後に国民(最高裁判所)が判定しなければならない。そして「秘密にした」のが不適切なら、「秘密を暴露した人」が受けた罰則と同一か、それ以上の罰則を「秘密にした人」が受けなければ不適切である。これによって簡単には秘密にできない。つまり秘密にするときには秘密にするリスクが必要であり、これが歯止めになるだろう。

  5. この法律が際限なく拡大解釈され、個人の生活が破壊され、検閲制度ができ、戦前の憲兵のようなことが起こらないか、あるいは官僚が自分たちの不都合なことを隠ぺいするのに使われないかということについて、何らかの歯止めが欲しいと多くの人が心配している。

法案は曖昧でも、その後、国会で上記のことを限定する法案を可決するか、あるいは今回の法律を改正すればよいので、何が問題かをあきらめずに求めていくことが必要と思う。

 

日本はまだ民主主義が定着していないので、十分な議論がないままに法令が制定されたり、内容を吟味せずに反対に終始したりする。このことはむしろ社会の対立を加速するだけで、現実的な力にはならない。

 

1)から5)の中でも特に多くの人が心配しているのは2)だろう。つまり「外交秘密」などとは縁遠い生活をしている個人の行動が常に「官憲」に監視され、突然、警察が来て監獄にしょっぴかれることはないか(「そんなことはない」と首相が言ってもだめで、それが明文化されていなければならない)ということをはっきりさせ、これぐらいは日本社会でまずは確認する必要がある。それも急ぐ。

 

(平成25128日)