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1955年と言えば戦後、10年たち、ようやく産業も活発になって「集団就職」が始まった年でもあった。多くの若い人が地方から東京、大阪へ移動し、故郷、親元、友人から離れて一人、頑張った。その頃、三橋美智也という歌手が「リンゴ村から」をうたっている。

 

・・・覚えているかい、故郷の村を、便りも途絶えて、幾年過ぎた・・・

 

で始まる叙情豊かな歌だ。多くの男性が心の底から叫び、故郷を思い、日本の高度成長を支えた。生活は見る見るうちに豊かになっていったが、そこで働く男性の心は大きく変わっていく。

 

それから20年、高度成長が一段落した1975年、太田裕美というアイドル歌手が「木綿のハンカチーフ」を歌う。この哀しい歌を太田裕美が楽しげに感情を入れずに歌ったことが大ヒットとなった。

 

・・・恋人よ ぼくは旅立つ東へと向う列車で
はなやいだ街で 君への贈りもの探す 探すつもりだ
いいえ あなた 私は欲しいものはないのよ
ただ都会の絵の具に染まらないで帰って 染まらないで帰って・・・

 

女性と男性の語り掛けが互いに絡み合う歌詞の中で徐々に男性の心が故郷から離れ、東京へ傾いていくことを女性が知ってあきらめていく・・・この頃、まだ「男性」という存在があったことを示している。でも、高度成長という出来事は男の心から人間を奪ってしまった。どうしてもお金の魅力には勝てなくなったのだ。

 

・・・恋人よ 君を忘れて変わってく ぼくを許して 

毎日愉快に 過ごす街角 ぼくは ぼくは帰れない
あなた 最後のわがまま 贈りものをねだるわ
 

ねえ 涙拭く 木綿のハンカチーフ下さい ハンカチーフ下さい

 

「リンゴ村から」では男性自身が故郷離れがたい気持ちを持ち、それに苦しみながら働く。人生においてお金は大切だが、それより故郷の方がもっと重要であることを感じている。強く女性を愛し、家族を守る決意のある男性ばかりだった。

 

しかし、高度成長が終わると、男性は人間としての心を失いかける。故郷の恋人の面影はちらつくけれど、それより目の前のお金や都会の喧騒に心を奪われていくのだ。

 

崩壊は働く男の心から始まり、次第に日本社会全体に広がっていく。1990年を境に赤字国債、年金崩壊、それに幻想としての環境問題が始まり、ついに「悩みながら額に汗して働く」男性は姿を消し、人のお金を狙う男性だけが台頭してくる。

 

そんな世相の変化の中、2012年、Ms.OOJAさんが “Be…”のシングルを出す。そこには、すでに男というものがこの世にいないことを感じながら、でもまだ未練がある、そんな未来を見ているようだ。

 

・・・もっと強くなれば孤独さえも消え去っていく そう思っていたけど・・・

 

もうこの世に男性はいないのだ、それはわかっているけれど、まだ心の中は相手のいる人生を求めている・・・心の葛藤はその中にある。

 

男性が心を取り戻すだろうか? 女性は離れていくのだろうか?

 

(平成251129日)