16世紀に拡大したスペイン、ポルトガルはすでに守備に入り、それに続いたオランダ、イギリスも現状維持だったが、アメリカとドイツはまだ勢力を拡大しつつあった.アメリカはアラスカをロシアから購入し、ハワイとフィリピンを戦争で取り、さらに中国にその力を伸ばしていたし、ロシアは日露戦争に負けて満州から撤退はしたが、相変わらず満州の北方にはロシアが南下を狙っていた.
そんな国際情勢の中で、清が滅亡して、中国と満州はまた別の国に帰った.清の皇帝予定者が満州に国を建国しようとするのは理の当然で、それを応援することによって日本も満州の利権を取り、ロシアとの国境が安定するとなると、これを捨てておく方がおかしい.
かくして満州帝国が建国され、満州、蒙古、中国、朝鮮、日本の5民族で国家を建設するという方向で進んだ.事実、日本の支配のもとで治安は回復し、鉄道も敷かれ、中国、日本、朝鮮などから多くの人が満州に入り、「ノーマンランド(誰もいない国)」と言われた満州は大きく発展した.
ところが、新しく中国主要部を支配した中華民国(蒋介石)は満州国を取り損なったので面白くない.なにしろ清の皇帝の墓を爆破して中国から満州の影響を無くそうとしたのに、満州に新しい帝国ができてそこに中国からどんどん人が移っていくのだから、脅威であることは確かだ.
そこで、蒋介石はアーリア人(イギリス)の力を借りることにしてヨーロッパに訴え、「リットン調査団」という委員会ができて、満州に来る.もともと満州は中国ではないので、中国が文句を言う筋合いではないし、日本が白人なら満州帝国建設は正しいこととされただろうが、白人の目的はアジア人の抑圧だったから、白人ならOKだが黄色人種の場合はNOだという結論を出した.
このリットン調査団の結論など「ああ、そうですか」とでも言っていたら良かったように思われるが、日本はあまりの不平等な取り扱いにカッとして国際連盟から脱退、国際的な孤児となった。
多くの歴史書は、満州国の建設に当たって、当時、この地方に勢力を伸ばしていた中国の軍閥・張作霖の話や、リットン調査団の「正義」を書いている.でも、もし、その書物にイギリス、アメリカなどの植民地、属国との比較が記載されていれば、日本による満州国の建国とその支配は「素晴らしいこと」になるだろう。
満州帝国は日本の傀儡政権であったが、それでも少なくとも体裁は独立国なので、アメリカのハワイ占領や、ましてイギリスのインド支配より遙かにましだったからだ.
満州帝国が建国されたため、日本の領土は、上の地図に示したように千島列島、日本列島、朝鮮、台湾、南洋諸島になった。日本のことしか知らないか、日本人はイギリス人やアメリカ人よりも劣る民族だという仮定が無い限り、この領土はそれほど奇妙ではない.
イギリスはもちろん、アメリカも当時は周辺諸国に力を伸ばしてアラスカ、ハワイ、グアム、サイパン、そしてフィリピンも占領していた.
「今の世界」で「当時の判断」の是非を論じてはいけない。イギリスはインドを取り、アメリカがハワイとフィリピンを取って良いけれど、日本が満州に傀儡政権を作ってはいけないという事になると、もともとイギリス、アメリカと日本は何かが違うという前提を置かなければならない。
反日日本人は「白人より日本人が劣る」という前提を置いている。イギリス、アメリカは「日本人はサルだ」と言い、「白人以外は他国を支配する権利はない」と心の底から信じている。多くの日本人も「イギリス、アメリカなどは特別に優れた国だから、アジアの国を占領しても良いけれど、日本はアジア人だからダメだ」という感じではないかと思う。
満州国建国も含めて、日本のアジア進出が適切だったかどうかはあまり結論を急がずに、「満州帝国ぐらいは当時の一等国なら当然のことだった」という結論だけにしておきたい。
(平成25年8月25日)