2013年7月29日早朝のニュース解説で山口の過疎地の5人殺害事件を扱った。事件は普段の恨みが募ってバットのようなもので5人を撲殺したという比較的、単純な事件で犯人の年齢は63才だった。
この事件の事件としての詳細をどこまでも詳しく話すことはできる。殺した犯人の一生、家庭などと殺された方の5人のことなど尽きることはない。でもこの事件が報道される理由は5人という多くの人が殺害されたということだけではなく、この事件の背景にある日本社会の問題点を考えるのがニュースの一つの見方だ。
社会は一つの「統計的分布」をしている。人付き合いで言えば、「標準的な人」を中心に人つきあいが良くいつも囲まれているような人から、ともすればかんしゃく持ちだったりして人と離れて過ごしている人までいる。そして、ニュースはその極端な例を報道するが、それによって中心地の移動を感じることができる。
日本は宗教のない社会だ。もし宗教があればどんな集落でも毎週、もしくは月に一度、その地域では知識人であるお坊さんや神父さんのお話を聞いたり、またかつてなら寄り合いで長老や小学校の先生などとの話があった。
今は道徳的な指針のない「一人一人の世界」になり、それは今回の事件のような地方ばかりではなく、都会でも人に囲まれているように見えて、ちょっとしたことで本当にひとりぼっちになるという恐ろしい状態になっている。
少し前に読者の方から「母子の餓死」というニュースを教えてもらった。ああ、可哀想に・・・こんなに豊かな日本でも、実質的に社会による殺人のような事が行われ、可哀想な母子に手をさしのべる人もいなかったのだ。
(平成25年8月3日)