ミヒャエル・エンデが「時間泥棒」という概念をその小説で示したように、この世には「お金泥棒」、「時間泥棒」、そして「頭脳泥棒」の3つがあります。その3つを併せ持ち、かつ「健康泥棒」も兼ねているのが「メタボ事件」です。もちろんこのようなミドル規模の間違った行為も、増税の一因になりました。
中央官庁の官僚の内、いわゆるキャリアー組といわれる人たちは、公務員試験を優れた成績で合格し、官庁に入省し、少しずつ実績を上げて課長補佐などの役職に就きます。おおよそ40才から45才ぐらいです。
キャリアー組は2,3年で職場を変わってキャリアーをつけて行くのですが、その時に「税金を多く使う仕事をすると出世する」という仕組みがあります。官庁はサボって仕事をしなくても役所は倒産せず、クビにもならないので、人間としてはサボるのが普通です。
頭が良く、受験競争に勝ち抜き、いかにして自分だけが得をするかということに関心のある人たちが「仕事をしなくてもクビにならない」という職場で頑張るというのは人間的ではありません。かつて共産主義が全滅してしまったように、「国内共産主義」の官僚組織が不能率になるのは当然なのです。
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その典型的な施策が、2001年の健康増進法と、メタボ事件です。健康増進法の方は機会を見て整理をしたいと思いますが、メタボ事件は「基本法と利権」の関係を見事に示したものでした。まず、世界各国の「肥満度」を示します。
このグラフでもっとも左(やせている)のが日本です。世界の先進国の比較では日本人がもっともやせていて、特に若い女性はやせすぎが心配です。若い女性の場合、体重が増えることを極端なほど恐れていますが、妊娠と出産という大きなことをするにはそのための体力が要ります。
私は特に少子化は問題が無いと思いますし、年金問題は別途、解決すればすむと考えていますが、もし政府が「少子化対策」を進めるなら若い女性のやせすぎは問題です。
下のグラフは世界の女性の「痩せすぎ度」を示したものです。もともとある程度の生活をすると食事が豊かになり「正常な体型」になります。でも余りに貧乏ですと、栄養がとれないので痩せます。それがグラフの左のカーブがぐっ上がっているものです。
このグラフの中で日本人の女性だけが飛び離れています。その点がグラフのやや右の上の方に一つだけポツンとある点です。日本人の女性は年間3万ドル相当の収入があるのに、痩せ方から見ると「3000ドルしか収入の無い女性」に見えるということです。
せっかく高い給料をもらい、食欲がある女性が我慢して収入が10分の1の人たちと同じなのですから、可哀想な気がします。
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そんな状態なのに、政府は「腹囲が85センチ以上の男性、90センチ以上の女性は、その人が所属する健康保険組合にペナルティを科す」という「まさか!」の「帝国主義的国家」のような決定をしたのです。その詳細はすでにこのブログでも書きましたし、余りに馬鹿らしいので止めます。
問題はメタボ事件の目的ですが、2000年頃から厚労省と御用学者、それに薬品会社が参加して「健康基本法を成立させ、大きな市場と利権を得る」という目的で、「日本人は太りすぎている」という幻想をふりまいてメタボブームの作戦を始めたのです。
私がNHKを廃止した方が良いと思うのは、このような時に決まってNHKは政府の宣伝機関となり、人の良さそうなアナウンサーが「メタボ、メタボ」と騒ぐのです。これほどハッキリしたデータがあってもNHKが日本の「空気」を作ることができるのは事実として認める必要があります。
放送法第3条の2には、「異なる考えがあるときには両方を放送する」という規定があり、メタボの場合など「先進国の中で日本人がもっとも痩せていること」について全く触れないのです。温暖化やリサイクルのように科学的なことならなおさら騙すことができるということでNHKの幹部は確信があるのでしょう。
ところで、このような話の時に「何のためにそんなことやっているの?」という質問がありますが、次の2つの事実を示せば実は十分なのです。
1)健康増進を目的とした天下り団体が140もある、
2)肥満防止剤、血圧降下剤は爆発的に売れる、
すでに「環境」という美しい文字は利権ですっかり汚れましたが、それに加えて「健康」すらお金の世界に絡め取られてしまったのです。「税金を使えば使うほど出世する」という規則がある限り、私たちは増税に次ぐ増税にあえぐことになるでしょう。
(平成24年12月30日)