(少しずつマスコミが伝えないことの事実と解説をしていきたいと思います)
「税金が足りなくなったから、増税する」という説明はなんとなく合理的な感じがしますが、家計でもおなじで、「贅沢をすればお金が足りない」のは当然です。でも、普通は「収入の分で我慢する」というのが普通で、収入が足りないけれど贅沢するというのは、「節約は日本人の美徳」とは離れているように思います。
2012年に民主党が公約に反して増税をしたのは「国債の赤字が蓄積して、子どもたちに迷惑を掛ける」ということでした。でも、国民の見本となるべき政府が、「赤字でも国債を出す=収入より多くのお金を使う」ということをし始めたのはそれほど昔ではありません。
まず、このグラフを少し勉強したいと思います。財務省が出している「国際ハンドブック」から取ったものですが、1972年に石油ショックが起こるまでは日本政府は「収入に応じて予算を組む」という考えで、赤字の国債は発行していませんでした。
ところが、石油ショックが来て、景気も悪くなり税収も減ったので、「緊急避難」という形で「赤字国債」を出し始めました。つまり戦後の苦しい時代もしなかったものを石油ショック以来、するようになったのです。
でも、最初の頃は「収入を超えて国家予算を組むのは良くないことだ」という認識があったので、石油ショックが一段落した1980年代の後半には国債の新しい発行(グラフの赤いところ)はゼロに向かったのです。
でも、「収入の分だけ使う」ということになると、政治家や官僚が収入以上に使って利権をとろうと思うと、国会で「増税」を決めなければなりません。しかし、増税するとそれを決めた政権は人気が落ちますから、「国民に正面切って「収入以上に使いたいので、増税したい」と言えずに、「わからないようにお金を使い、後で「足りなくなった」といった方が国民は理解するだろう」と考え、再び、赤字国債を出すようになったのです。
でも、国債を出すと利子が入ります。そこで、「これまで借りた国債の利子を返すためや、満期が来た国債を買い戻すための国債=借換債」を発行するようになり、2006年には、「新規国債」が30兆円なのに対して、「借換債」が110兆円と実に国民の見本とならなければいけない政府が「自制の聞かないサラ金地獄の人」になってしまったのです。
家庭で言えば、サラ金から30万円を借り、その利子を払うためと去年借りたお金を返すために、さらにサラ金から110万円を借りているという状態です。これでは借りたことにはなりません。だれでも「借りるのは良くない」と考える理由は、「利子や返すのが大変だから」ということで、利子も返すお金もまた借りるということができれば、簡単です。
そんなことを国がやっているということ自体が奇妙ですが、現実には「使い始めたら止まらない」というのが人間の性質ですし、官僚は頭だけは良いので理由付けはそれほど難しくありません。かくしてズルズルと「赤字国債」や「借換債」を出し続けたのです。
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これには国民側の問題もあります。1990年頃にバブルが崩壊すると「もったいない」という話が起きて、みんなが消費を控えました。消費を控えること自体はそれほど悪くないのですが、消費を控えるということは「ものが売れない」ということなので、企業は設備投資を控えます。
つまり「ものが売れないから工場を作ることもできず、銀行のお金が余る」という状態が発生したのです。お金があるのに使わないという状態になり、銀行は困り果て、まずは金利をほぼゼロにし、さらに政府に「借りてくださいよ」ということになります。
この時、思い切って「マイナス金利」にすれば赤字国債を減らすことができたでしょう。それでも死蔵される紙幣が増えるだけで、社会としては良い方向にはいきません。なにしろ「お金があってすることがない」という状態なので、国債を出して国がそのお金を消費するしかなくなったということです。
こんな事は長く続きませんから、何とかしなければならないのですが、誰も解決策をだすことはできずに、ズルズルと「お金は余るけれど、使い道はない」という状態が22年も続いたのです。
「節約=使わない」を良いこととすれば、同時に「働かない=収入を減らす」という方向しかないのですが、そんなことを言うと損をするので誰も言わなかったのです。収入が同じで使わないのですから、そのお金は銀行から国に行き、国が「必要も無いこと」にお金を使わなければなりません。
国の事業というのは「儲けるため」ではないし、事実、国の仕事の94%が赤字です。福祉、補助金などにふんだんに使われました。仕事は赤字ですから、使ったお金が返ってくる訳でもなく、その分はさらに「借換債」として補填され、ついに増税になったということです。
(少し長くなり、ややこしいので、一応、基本的なことで終わります。)
(平成24年12月22日)