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私もかつては情報の「受け取り側」でした。情報の受け取り側の場合、発信される情報をそのまま受け取り、あるいは信じ、それを活用して日常生活や研究に活かしてきました。

しかし、次第に情報の発信側になると、情報そのものに対する見方が変わってきたのです。今、ネットの世界と接していますと、「受け取り側」で情報を受け取り、それをそのまま「発信側」として発信しているのではないかと感じることが多いのです.

「受け取り側」の時にはあるいは「自分の判断」が不要な場合もあるし、何を信じても誰にも迷惑を掛けないのですが、「発信側」の場合は自分の発信した内容に左右される人がおられる可能性が高いので、発信はあるバリアーがあると考えられます.

私の場合、「複数の情報が一致していること、原理原則から見て間違いが無いこと、情報の価値が高かったりすること」などの条件を超えないと発信しません.特に私の場合は情報が複数であること、原理原則に反していないことが重要で、かつ、「発信する内容は自分が納得している場合だけ」という制限をつけています.

たとえば、「タバコと肺がん」を発信するまでには、自分なりにデータを集め、世間で言っていることが本当なのか、自分の今までの科学者としての人生で学んだことと相反しないかなどを十分に考えました。私が最も苦しんだのは、「生データになかなか接近できない」ということでした。論文を取り寄せてみても、「対象人数が何人で、どういう調査をしたか」という初歩的なことが書いていないのです。

最近、話題になっている「未成年でタバコを吸う人の寿命が短い(朝日新聞は10才と言っていましたが、論文はほとんどを占める男性が8才)」というものですが、原論文を読むと寿命を決める様々な原因の内、なぜか「タバコ」だけに注目しています。

国立がんセンターのデータはあまり参考になりませんが、それでも寿命を支配したり、健康を害する要因は複数あります。たとえば野菜不足、肥満などです。その中でなぜタバコだけを取り出せるのかは明確ではありません。また特に「未成年でタバコを吸い始めた女性」というのは、タバコを吸わない女性約34000人に対してたった250人で、この二つの集団を比較して「10年」という整理をすると「タバコは健康に害がある」という先入観のある人はそのまま受け取るでしょう。朝日新聞が集団の多い男性の方の数字を出さずにたった250人の方を見出しに出したのもいつものやり方です。

ところで、1960年代に20才未満でタバコを吸っていた女性250人はその他の女性に対して「平均健康関心度」は低いと考えられます。私がちょうど学生時代ですが、あの頃、20才未満でタバコを吸うというと特殊な職業の人だけでした。その人たちは生活も荒れ、夜更かしで、いつもラーメンを食べているという人が多かったように思います。

生活程度と寿命の関係はかなりハッキリした傾向があり、私の感じでは1960年代に未成年でタバコを吸い出した女性の平均的な生活程度は34000人の母集団より低かったのではないかと思います。

このように集団の中の1%にも満たない特殊な集団の健康状態を、大きな母集団と比較し、それが「タバコだけ」が原因と結論する方も問題ですが、論文を読めばわかるのに、それを知っていながら報道する方も疑問です。

つまり、事実を発信しようというより、事実を少し曲げて自分の考えを言いたいとか、大げさなことを言えば販売量が増えるなどの意図が見られます。科学的なことは、できるだけ事実を正確に把握し、自らの経験や学問的根拠に基づいて、判断してから発信しなければなりません。

その意味で、朝日新聞のそうですが、この記事を転載しているネットが多いのに驚かされます。まさに「受け取り側の基準」をそのまま「発信側の基準」としているように思います。またもしかして「正しい情報を伝えよう」ということではない、別の意図(たとえばタバコ追放)などがあるのかも知れません。私は「喫煙率がここまで減っているのに、なぜ肺がんが急増しているのか? 肺がんの増加を食い止めるのはなにか?」と考えますが、人によっては「肺がんはどうでもよい。タバコを止めさせれば勝ちだ」とまるでゲーム感覚の人もおられます。

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温暖化の発信間違いについては、このブログでも悔い返し説明していますが、今だに受け取り側の基準のままテレビなどでコメントしている専門家を見かけます。その第一が「北極やグリーンランドの氷が融けると太陽からの光の反射率が下がって温暖化が進む」というもの、もう一つが「温暖化するとオゾン層が破壊される」というものです。

この二つは、単なる情報を自らが発信する時に、科学的な考察を入れていないという意味で望ましくないと考えられます。地表の温度が上がると水分の蒸発量が増え、それによって雲が多くなります。北極海の海氷は夏には総面積の14000平方キロメートルの30%ていどですから、これがすべて融けても温度の上昇による雲の増加とは比較にならないほど少ないと考えられます。

またオゾン層ができたのは今から15億年ほど前ですが、その頃のCO2は現在の100倍以上でしたから、CO2が増えるとオゾン層が破壊されるとすると、もともとオゾン層が形成される理由がなくなります。

私は情報を発信する側にいますが、自らが発信する情報が「受け取った情報そのまま」ではなく、それを自らが考え、判断し、複数の情報を確認して発信します。それは情報発信者の社会的責務であり、倫理でもあると思っています。最近は、たとえば「***白書に書いてあった」というようなことが情報発信者の免罪符になっているところもありますが、情報を一つ一つ吟味するのが発信者の最低要件であり、それはおそらく受け取り側も必要なことと思います。

(平成241110日)