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今から20年ほど前、急に「朝食を食べなければいけない」という話がでてきました。それまでは個人の健康のことをあまり政府やマスコミが言わなかったのですが、この頃から、「健康指導」なるものが本格的に登場してきました。

私がやや違和感を持ったのは、もともと歴史的には日本人は一日二食でしたし、朝起きたら田んぼに行って一仕事してから食事を取るのが普通の生活のリズムでした。また動物は普通1日一食で、それも夕刻に取る肉食動物が多いことも私の違和感になりました。

さらにその頃、私は良くフランスに行っていましたが、フランスのホテルに泊まると「コンチネンタル・ブレックファスト」というのがでてきて、パンとコーヒーだけで終わりです。時には、「イギリス海軍士官の朝食」とかいってホットケーキにたっぷりと蜂蜜がかかったものと大量の牛乳を飲まされる事もありましたが、普通は質素な朝食でした。

そこで、栄養学の本を読んだり、先生にお聞きしたりしていると、当時の多くの栄養学の先生は戸惑い「ええ、そこはよく分かっていないのですが」とお答えになりました。その中で比較的しっかりした栄養学の本には、「食事は栄養補給である」という原理原則と、その理由や実験デーアットが書いてありました。

つまり、食事というのは体が栄養不足になり、たとえば肝臓のグリコーゲン濃度が減ると食欲中枢が刺激されて、餌を採ろうとするのが動物だということでした。

つまりたとえばご飯を食べるとそれがブドウ糖まで分解され、それが小腸から吸収されて全身に回る。最短で5分で血中にブドウ糖がでるけれど、余るとグリコーゲンになり、それが肝臓や筋肉に貯蔵される。食事を取らないとグリコーゲンがなくなるまで半日ぐらいなので(約1500キロカロリー)、次に脂肪組織が分解されます。

普通の生活をしていて夕食に美味しいものを食べると寝るときにはまだグリコーゲンが充分に残っていて、寝ている間は基礎代謝に近いエネルギーしか使いませんので、朝起きたときにはまだ肝臓に少しのグリコーゲンが残っているので食欲がないということになります。

最近では、ダイエット、スポーツ科学、それに糖尿病などの研究が進んで、血中のグリコーゲン、グリコーゲンと脂肪の関係、それにインシュリンの変動など詳しく調べられています。研究の結果を簡単にまとめますと、すべてが理屈通りで、食事を取るとグリコーゲンが増えて、しばらく食べないと減るという単純な関係です。

でも、血中の濃度などは肝臓のグリコーゲンの放出量をコントロールしてほぼ一定に保っています。

それとともに、いかがわしいデータも多くあります。たとえば「朝食を食べた子供や学生の方が成績が良い」と文科省や専門家が言っているので、調べてみると、「朝食と成績の関係」しか調べていないのです。ある程度のレベルの学者なら、成績に影響がありそうなこと、たとえば、家庭環境、親の生活のリズム、教育に熱意を持っているか、朝の起床時間などを調べます。

大学生でも「朝食を食べる学生」と「朝食を食べない学生」とでは、平均的には「朝食を食べる学生は、真面目で、自己管理ができる」傾向があり、食べない学生は「毎日、夜が遅く、朝が遅い」ということですから、これが成績に関係が無いはずもありません。

また、朝食をたべる学生に女学生が多い場合などは、平均的な成績は女性の方が上ですから、性別も関係してくるでしょう。

このような時にいつもでてくるのは、「本当は朝食が原因でなくても良いじゃないか。朝食が大切と言えば早く起きるのだから」というのがありますが、これは「子供だまし」の類いです。幼児に「お化けが来るから寝よう」と言うようなものです。

このようにしていると「何が本当だかわからない」ということになり、そのうち、「朝食を食べると頭がスッキリして、仕事の能率があがる。これは朝起きたときに血中のグリコーゲンが最も低くなっているから」というようなまことしやかな説明になるのです。

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さまざまなデータを勉強し、科学的な合理性から考えると、次のようになるようです。
1) 夜12時に寝るとして、夕刻に食べれば朝までに肝臓のグリコーゲンが使われるので朝食が食べたくなる。
2) 夜10時頃に食事をすると、朝はまだグリコーゲンが残っているので食欲がないし、食べる必要もない。
3) 寝るときには空腹でなければならないというしっかりした研究成果はなく、個人差の範囲である。
4) 寝ると体温が下がり、基礎代謝になるのでグリコーゲンの減り方も少なくなる。
5) 朝起きたとき、体内時計が25時間なので、それを24時間にセットするために、太陽の光を浴びることと、お茶かコーヒーを飲んで覚醒する、家族との話が有効である。
6) 朝起きて、食欲がある人は食べ、無い人は食べない。
7) 朝食を食べないといけないという強迫観念を持たない。
8) 朝、食欲がない人は、10時頃簡単なお菓子を食べる(これは糖尿病や肥満の原因にならない・・・学問的資料あり)

もし人間が自然の中に住んでいるとすると、食べたいときに食べ、寝たいときに寝て問題はないと考えるのが妥当です。食べたくないというのは肝臓のグリコーゲンがまだ充分にある状態ですから食べなくても良いのです。

もちろん極端な偏食をしたり、ムチャクチャにお酒を飲んだりしていれば、すべてのバランスが崩れますから「肝臓のグリコーゲンが減ったら摂食中枢が刺激される」などというまともなことも狂います。

朝食を食べることを勧めている本をジックリと読んでみると、「朝、おきたときにはすでにグリコーゲンがほとんど無くなっているので、朝食を食べないと大変な事になる。頭脳はグリコーゲンが必要だから、ぼーっとする」などと書いてありますが、これは「前の夜、6時頃軽い夕食を食べて寝た場合」で、朝、おきて太陽の光を浴び、少し軽い運動やコーヒー、それに家族との話をしても、朝食が食べたくないということになると、それは何かの病気です。朝食の問題とは言えないでしょう。

また、夜11時にお腹が減っていたので、たらふく食べて(減っていたら食べて良い)、寝た。朝起きたら食欲がなかった・・・というのも当たり前の話で、この場合は肝臓のグリコーゲンは充分にあるので、別に食べる必要もありません。

その意味でやや栄養過多だったヨーロッパの人が、朝はコーヒーとパンで済ませるというのは、コーヒーで覚醒してリズムを取り戻し、パン(炭水化物)で昼までのグリコーゲンを補給しておくという点では妥当なように思います。

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最後にもっとも重要なことに気がつきます。それは「精神状態を自然にしておいて、食べたいときに食べる」ということです。なぜかというと、食べたいというときには体が栄養を求めているので、そこで食べると、「食物を一回、全部分解して」、「体に必要なものを再合成する」と言うことだからです。

つまり食べたくないときに「朝食は食べなければ」というような強迫観念を持つと、体はなにが必要かわからないので肥満などの原因になりますが、食べたい時には体は何らかの栄養を必要としています。その点では「肝臓のグリコーゲンによってだけで空腹を感じる」という現代の科学はそのうち、修正されるでしょう。

その点で、「夜食はなぜ食べたくなるのか?」、「お酒を飲むとなぜラーメンが美味しくなるのか?」なども追々、調べていきたいと思っています。それなりの理由があり、体に良いはずだからです。

このような基本的なことを間違えるのは、たとえば「コラーゲンを食べると・・」というような話があるからです。コラーゲンは人間の体のタンパク質の30%ほどあるもので、普通に体内で合成されています。またタンパク質は食べるとバラバラに分解(消化)されて吸収されますから、コラーゲンを食べたからコラーゲンが体のどこかに行くわけでもないのです。

最近のコラーゲンの宣伝は一種の誇大広告ですが、それ以上に「科学的な思考を停止させる」という意味で、マイナスイオンとともに産業界の倫理を求める問題です。

(平成24102日)