今から3年ほど前でしょうか、原子力委員会の研究開発部会で原子力予算の分配をしている時に、私は次のように発言しました。
「ここにおられる原子力関係の方は原発が安全だと考えておられますが、日本人の多くが原発に不安を持っています。この際、私たちが間違っている可能性があるので、原発の安全研究のお金を増やす方が良いと思います。」
これに対して委員長代理の先生が「わかりました。それでは広報費を増やしましょう」と言われたので、私は「いや、原発が安全と言う広報をするのではなく、原発は危険だという前提のもとで安全を見直す研究にお金を投じたいという意味です」と説明しました。
科学者は自然に対して謙虚で、研究をする過程でイヤと言うほど自分の考えが未熟であることを知ります。厳しい研究をすればするほど、自分の至らなさを感じるものですから、その点で、この委員長代理(東大教授)は「科学者ではない」と言うこともできるでしょう。
また、人の意見が自分と違うとき、人の意見が正しいかも知れないと思うことが民主主義の基本と思うのです、この時の委員長代理の発言はまだ良く覚えている衝撃の一言でした。「これでは日本の原子力もダメだ」と感じたものでした。
(平成24年8月28日)