1978年の気象観測人工衛星、1988年のハンセン証言、そしえ1998年の気温急上昇と10年ごとに温暖化でエポックがありました。

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科学を長くやっていると、自然というのが実に複雑で到底、人間の頭で考えられるようなものではないことに常に気づかされます。私が温暖化に冷ややかなのは、自然を理解できない人間はこれから寒冷化するか温暖化するか分からないのに、温暖化対策などをすると私たちの孫は「寒さと農業の不作」で酷い目に遭うのではないかと心配しているからです。

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1988年の少し前、アメリカは天候が不順で、干ばつ、寒い夏などが続き農業はとても困っていました。その頃はまだ「バイオ燃料」などはなかったので、食料を燃料にするなどという大胆なことは行われていませんでした。だから、値段は上がらず、収穫は少ないというような状態が続いていました。

このグラフは1980年代のアメリカ農業がいかに不調だったかを示したものです。そして、いよいよ1988年が訪れます。この年、気象庁の言い方では「過去に経験の無いほどの干ばつ」に見舞われた(本当は20,30年に一度はあるのですが)北アメリカはトウモロコシの収穫が実に20%も減りました。

2012年8月、アメリカのトウモロコシの不調が話題になっていますが、14%の不作ですから、1988年よりは良い方です。(テレビでは「歴史的な不作」と言っていましたが、勉強していないのでしょう。最近、気象庁やテレビが豪雨や台風で極端に強い言葉を使っています。今日は沖縄に来た台風15号について「史上最強」といっていましたが、本当は「2003年の台風14号と同じ規模」のものを「史上最強」と表現しているようです。)

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そこで、上院議員、テレビ局、銀行資本が手を組んで、一騒ぎをおこします。それが1988年6月23日にアメリカ上院で開かれた「気象変動の公聴会」でした。5月のシカゴ商品相場の動きを見て、さらに6月23日というワシントンで有名な「熱い特異日」を公聴会の日に選び、それに加えて朝早く議会に来た担当者が冷房を切るという丁寧な作戦を組んだのが成功して、ものすごく熱い議場の中でNASAのハンセン博士が証言したときのグラフがこのグラフです。

それから23年経った今では、温暖化の予測がまったく外れたことを示しています。科学的根拠がなかったからです。

しかし彼は「もし、これから世界が協調してCO2を減らさなければ世界の気温はさらにあがり、気候が変動して大変なことになる」と演説し、それを受けて農業議員が「工業がだすCO2が原因だから、農業に金を回せ」と工作をします。これが地球温暖化騒動のもとでした。

しかし、自然と人間の関係は実におもしろいものです。ハンセンが証言した1988年以後、二つのことが起こったのです。一つが「気温が上がらなくなった」ということ、もう一つが「農業が好調になった」ということでした。「夜明け前がもっとも暗い」とはよく言ったものです。

ところが、この話を聞いて「しめた!」と思った人は多かったのです。まずゴア元副大統領は「これは原子力に有利」、サッチャー元イギリス首相は「北海油田の後、原子力をしなければ」、ヨーロッパは「アジアの植民地を失って困っていたが、これこそアジアの発展を止められる」、日本の橋本元首相「政治的に苦しい情勢を打破できる」、環境省は「このビッグテーマで環境庁と省にするぞ」、環境産業「3兆円の利権だ」と言うことになったのです。

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かくして人間社会は温暖化騒動でわいたのですが、地球は人間の言う事を聞いてはくれません。CO2の温暖化なら真っ先に気温が上がるはずの人工衛星で測定した上空の気温はいっこうにあがらなかったのです。でも突然、1998年だけ上がったのですが、この理由は何でしょうか?

もともとCO2によって気温が上がるならだらだらと上がるはずですし、まして「急激に下がる」などということは起こらないのですから、この変化はどうにも説明できなかったのです。数1000メートル上空の気温が半年から1年だけ上がってまた元に戻るなど言うことが起こるには、なにか全く別のことを考えなければならないからです。

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ところが、その頃、日本の四国沖でも不思議なことが起こっていました。黒潮の水温はペルー沖の影響を受けて少し高くなっていましたが1988年になって急激にあがり、また下がったのです(高知大学論文による)。

この水温の上昇で温帯性の藻類が高知の沿岸から消えて、熱帯性の藻類に変わったのです。この現象を「CO2による温暖化のせい」と新聞などが報じました。

マスコミがいい加減であることは、ここで特に書くまでもないですが、CO2によって上がる温度は大気ですから、大気の温度が上がって海水温が突如、上昇するということはありません。空気から水への伝熱量は物理的に分かってみるものでとても小さいからです。また温暖化というのは水温が上がったり下がったりするものではなく、徐々にあがるのです。

そうすると、上空の気温でも、海水温でもこの1998年の急上昇は温暖化とは別の原因としなければなりません。また、上空と海水温の両方を同時に説明できるものでなければならないのも当然です。

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ところで「温暖化騒動」が社会に出てきた頃には多くの人は「これまで地球の気温はどのように変化し、何が問題だったか」について欲知らなかったのは当然ですが、すでに20年ほど経ったので、そろそろ「冷静に歴史を振り返る」ことも必要と思います。このグラフは今から40万年ほど前からの地球の気温の変化で、だいたい12万年ごとに暖かくなったり(間氷期)、寒くなったり(氷期)しています。

氷期になると北極海から台湾ぐらいまでがすべて氷河に覆われますから、日本列島は誰も住めないでしょう。もし今までの寒暖の周期がこれからも続くなら(その可能性が最も高い)、しばらくすると気温はドンドン下がっていくはずなのです。「厳冬の前の小春日和をなぜ怖がるのか?」と言ったのはアメリカの物理学者ですが、私も温暖化について同じ心配をしているのです。

この12万年の周期より短い周期が500年で、ローマ帝国の東西分裂、ノルマンディーの北方進出、世界的な戦国時代、そして今の温暖化騒動と、過去に500年ごとの変化があり、そのたびにアルプスの氷河は頂上まで融けてはまた麓まで進むということをくり返しています。グリーンランドの氷も同じです。

このブログで再三、指摘していますが、科学的なことで知らない人を脅しお金を取る・・・ということはこの温暖化ばかりではなく「町にゴミがあふれるからリサイクル」、「東海地方に地震が来るから耐震補強」、「タバコを吸うと肺がんになる」など枚挙にいとまがありません。

専門家がその魂と誠実さを失ったのはヨーロッパで1920年と言われていますが、日本こそが専門家の魂(武士の魂)と誠実さ(日本人の誠)を保ってもらいたいものです。

(平成24827日)