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人生講座の第一回に「貨幣経済のもとでは節約することはできない。かえって節約は消費の増大になる」ということを書きました。第
2回目は「そんなことはわかっているのに、なぜ政府や偉い人は節約を国民に勧めてきたのか。その目的はなにか?」を考えてみたいと思います。

もし世の中が安定していて、年金なども崩壊しなければ、いざというときに少しの貯金は別にして、その年に稼いだお金はおおよそその年に使ってもそれほど不安はありません。というのは、人間は小さい頃から勉強し、がんばり、仕事をしてお金を稼ぎます。そうして少なくても多くても、稼いだお金で楽しい人生を送るのが本筋だからです。

もちろん、楽しさはお金の額とは直接的には関係がありませんが、小さい頃にお母さんに「一所懸命、勉強しなさい」と言われるのは、お母さんは子供に、少なくとも人並みに、できれが人より少しは良い生活をさせたいと思うからです。

だから、月給が20万円より、30万円の方が良いと素直に考えた方が良いでしょう。買いたい物も買えるようになりますし、たまにはおいしい物も食べられるからです。

30万円使って楽しい生活をすれば良いのに「地球環境のために」「節約する」ということは、お母さんがせっかく与えてくれたチャンスをいかさずに、無理矢理、暗い人生を送ることを意味します。

もちろん、30万円を節約して20万円で生活しても12月になったら12ヶ月の間、節約して貯めた120万円を下ろしてパッと使うというのならよいのですが、それでは節約には入りません。

毎月使わずに一度に使うというのは、個人としてはお金をいつ使うかの問題だけですし、環境としては120万円がダブルで使われる(銀行からお金を借りた他人が120万円、それにさらに自分が120万円使う;前回説明)、余計に環境に悪いのです。

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それではなぜ、政府は「もったいない」とか「節電・省エネ」とかいうのでしょうか? まず考えられることは、国民が節約するとそのお金が政治家や官僚に入るからかもしれません。

つまり、かつて(たとえば、戦後や高度成長時代)は国民が節約したお金は銀行を通じて民間の企業に行き、そこで国民が欲しい製品を作ってくれました。つまり、普通は「節約すると、そのお金で企業が自分の欲しいものを会社が作ってくれた」ということになります。銀行はその仲立ちをして社会に貢献していました。

簡単に言うと、ある人が100万円を預けると、企業が100万円を借りて、120万円で売れるものを作り、自分は10万円を稼ぎ、銀行に110万円を返し、銀行は5万円をとって、その人に105万円を返すという具合です。これなら、預金した人は5万円、銀行も5万円、企業も10万円と全員が喜んだ時代でした。

ところが今から20年前にバブルが崩壊して、成長が止まりました。経済成長の時代に100万円借りていた企業が(簡単に言うと)居なくなってしまったのです。同時に「環境の時代」になり「もったいない、節約しよう」という人が現れました。かつて100万円を銀行に預けた人は節約して150万円預けるようになったのですが、借りる企業が居ないので銀行にお金が留まるようになります。

企業は経済成長が止まるだけでも困るのに、「節約ブーム」で50万円を残すようになった(100万円貯金していた人が150万円貯金するから)ので、それだけ売り上げが減って、お金を借りて増産するどころか、事業を売らなければならないようになります。

この150万円が1年もたたずに引き出して使ってくれるとまだ何とかなったのですが、「年金不安」と「環境を悪くするから」ということで預金を下ろして消費することもしなくなったのです。

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そうすると、銀行にお金があふれたので、まず金利をほとんどゼロにしたのですが、それでも銀行が赤字になります。そこで銀行の首脳部が政府にかけあって「余ったお金で国債を買いますから、国債を出してください」と言います。最初のうちは政府も「赤字国債になるからダメ」などと言っていたのですが、企業が借りなければ政府が借りないとお金のつじつまが合わないので、赤字国債を発行し始めます。

これでとりあえず日本のお金のつじつまは合うようになりました。(簡単に言うと)ある人が150万円を銀行に預けると、国が赤字国債を出して銀行がそれを買い、国は1年に5万円の利息を銀行に払います。もちろん、国の仕事は福祉にしても教育にしても(お金を配るだけのことで)赤字ですから利息に払うお金も国債を売って何とかします。

つまり「国民が節約し、企業が借りなくなったので、国が国債を出して借りる」ということが20年間にわたって続いてきたのです。国に集まったお金は、1)お役人の給料や国の施設、2)天下り先の給料(天下り先には国債のお金が行く)、3)箱物行政で施設ができる(八ッ場ダムのようなもの。半分がムダで、半分ぐらいは国民のためになる)、4)ムダな補助金を配る(たとえばバイオ燃料開発に6兆円を出し、すべて失敗して失う)などとして消えていきました。

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そして20年。ついに赤字国債が1000兆円に近づいたので「財政健全化」のために消費税の増税を行います。つまり、国民が節約したお金は国に渡り、政治家やお役人本人や、彼らと親しい人のところにいきましたが、なにしろ効率の悪い仕事に使われるので、半分ぐらいはムダに消えていったのです。

節約して150万円預金した人はどうなったでしょうか? 国が150万円を借りて、半分は役人の天下りなどに使い、半分は預金した人も利用した箱物(公民館など)を作り、そこに働く人の給料を払い、冷暖房費で消えていったのです。簡単に言うと、150万円のうち、100万円を捨て、50万円ぐらいを公共サービスとして受け取ったということになります。

かくして国民が節約したお金は政府が使ったので、環境という面ではなにも変化はありませんでした。つまりこの場合も「節約」は「環境を改善する」事にはなりません。

さらに、国の借金が増えたので、「財政再建」のために消費税を増税することになり、その人は税金で150万円を取られます。国民はますます不安になり、銀行に預けてある150万円は引き出さず、税金は150万円取られるので、使うのを150万円減らさなければなりません。ますます不景気になり、政府に親しい一部の人を別にして、国民総貧乏化が進行中ということになりました。

でもお役人は裕福になります。なにしろバブルが崩壊してから20年。国民に節約さえ呼び掛ければ赤字国債を出してお金が入ってきますし、赤字国債が貯まりますから、それを補填するためにさらに消費税を上げればまたお金が入ってくるからです。奇妙なことですが、善意で節約をしてきた人はずいぶん日本国民を苦しめましたとも言えるのです。

「環境のために節約を呼び掛ける」というのは「お役人がお金をもらう」ということでもあったようです。(さらに、消費税を増税したお金がどこに行くのか、私たちの人生はどうしたらよいのかなど次回以後に踏みこんで考えてみます。)

(平成24811日)