オリンピックが開催されて多くの日本人に深い感動を与えています。商業化されたとか、本来のスポーツマンシップを忘れているなどと批判もありますが、やはり頂点を目指して努力してきた人の緊張感、努力に接すると人間は感動するのも事実です。
ところが目を日本に転ずると、政府の公約破棄、原発事故と電力会社の横暴、中学校のいじめ自殺と教育委員会の保身などおよそ感動とはほど遠い事ばかりです。今や日本には街角にヒット曲が流れることもなく、展覧会がどこで開かれているのかもよくわからなくなりました。
このように、私たちの心を揺さぶることが無くなったには様々な要因があると思いますが、私の専門の近くから見ると、それも当然のような気がします。
まず第一に「未来が暗い」ということですが、これは「本当に暗い」のではなく、「一部の人が儲けるために無理矢理作り出した暗さ」です。たとえば、石油石炭天然ガスは1000年は充分あるのに、太陽光発電などの自然エネルギーに補助金を出すために「無い」と言って不安をあおることです。
理想に燃えて太陽電池を研究したり、それを自宅につけたりすることは良いことですが、その時に人のお金を当てにし、電気が余ったら電気料金の約2倍で売ろうとするという背信行為が正当化しています。
「CO2で温暖化する」というのもウソで森林に補助金を入れたい」、「天下り先を作りたい」というだけのことであることが徐々に明らかになってきています.
このような資源や環境の分野での「作り出された暗さ」には、リサイクル、ゴミがあふれる、ダイオキシンは猛毒だ、環境ホルモンでメス化、コンビニエンスストアの夜間営業禁止、レジ袋の追放など枚挙にいとまがありませんし、さらにタバコの追放、メタボ利権、高血圧利権など人の健康を出汁にするものまで出現している有様です。
このような現象は環境問題に限られるわけではありません。年金は積み立てておいた記録が5000万人分、無くなってしまったり、現金自身が政治家の圧力で貸し出されて戻ってこなかったりしています。さらに地震と原発事故で疲弊している国民に、増税したり、扶養家族控除を止めたりと追い打ちをかけています。
これらは作り出された暗さで、本物の暗さではありません。世界の資源はたっぷりありますし、温暖化はしません。ゴミは焼却すれば町にあふれることはなく、タバコで肺がんになる人の数は少ないのです.
むしろ、日本は諸外国に比べて対外資産が極端に多く、技術力も高く、国民の真面目さ、勤勉さが残っていますので、未来は全く心配は無いのです。多くの人が毎日を楽しく過ごせば、景気は良くなり、日本の将来は明るくなるでしょう。
第二に「誠実な社会」を作ることです。ギリギリの商売の中で若干のだましが入るのは良いのですが、毎日の生活や目に見える政治の世界でだましが連続すると、人間はすっかり夢や目標を失います。
現在の日本では「政府が「悪」であるとき、「正」を何で決めるのか?」という問題に直面しています。そして本来、学問の自由が保障されて学問に忠実であるべき学者が曲学阿世(御用学者)であったり、表現の自由で守られている報道機関が事実を報道するのをためらうようなことが起こっています。
選挙の公約の遵守、学問への誠実性、報道の公平性などはいずれも社会の基幹をなすものですから、これらが崩れたら社会が暗くなるのは言うまでもありません。
さらに、ある主婦の方から「真実を口にするのが憚られる時代」というメールをいただきました。ヒットラーのドイツ、スターリンのソ連に代表されるように、日本も真実を口にするとバッシングを受ける社会になりました。
社会的に将来が不安で、ウソが多く、思ったことを口に出せない社会・・・そこに感動があるはずもありません.どんなに貧乏でも「明日は今日より良くなる」という確信や、「自分の身の回りは愛と信頼に満ちている」という安心感こそが人間を人間らしくし、人間の知性、美的感覚、情緒などが花開くのです。
・・・・・・・・・
ヨーロッパの中世は精神が抑圧された時代でした。ある若者が高僧に「太陽を観測すると黒い点のようなものが見えます」と言ったところ、高僧は「古典を調べてみる」といって寺院の中に入り、しばらくして出てきて「古典をくまなく調べたが、そのような記述はない。黒い点やらは君の眼のシミだろう」と言った。
この話は中世の抑圧されていた時代、新しい事実を見いだしてもそれを認めてくれず、形式論だけで進んでいたことを示しています.このような社会の雰囲気では科学や芸術は進歩せず、だからこそ「ルネッサンスの爆発」があったのです。
まず、自由な雰囲気の日本、誠実を大切にしてウソを嫌う日本、他人をバッシングしない日本、優れた子供を素直に褒める日本、自分の国の伝統に誇りを持つ日本、そして日本の国土は日本人が守るという決意を持った日本を作ろうではないかと思います。
私個人はどんなことが起ころうと、常に真実を語り、楽しく生活し、誠実に生きようと思っています。それがたとえバッシングの対象になっても全然気にしません.誰かが行動に起こさないと新生日本は誕生しないからです.たった一人の力ですから微々たるものですが、それでも同じ気持ちの人が大勢おられることを励みにやっていきたいと思っています。
自殺、放火が世界のトップクラスという今の日本が病んでいるのは言うまでもなりませんが、それは「回避できないこと」ではなく、私たち大人が決意をすれば回復できることだと思っています.
(平成24年8月4日)