主として水産庁が発表している太平洋岸のサカナの2012年6月頃の汚染状態を整理しました。まず福島沖です。(ダブルクリックかシングルクリックすれば、若干見やすくなります)
まだかなりの汚染が見られます。海洋が汚染されたとき、それが長期間にどのような影響をあたえるかは今回の福島原発事故が人類にとって最初なので、どうなるかわからないのが現状です。
食べられるレベルは1キログラムあたり40ベクレル以下です。現在の食品の基準値は政治的な思惑があって、かなり高く設定されていますが、関東、東北の方は外部線量でもかなりの被曝をしており、それにこのような食材からの被曝を「足し算」するので注意が必要です。
また、お子さんでグラウンドでスポーツをする場合は、土ほこりなどからの被曝を受けますから、少し安全側で考えなければならないと思います。
注意が必要なのは「福島沖のサカナの汚染を平均するということではない」ことです。たとえばここに示したサカナを全部食べる場合は平均でも良いのですが、普通の人は好き嫌いがあり、6月20日付近にシロメバルを食べた人は1500ベクレル程度の高い汚染魚を食べることになります。従って、あくまでも個人の健康という点で食材を提供する人も考えてください
またNHKが「福島沖で汚染されていないサカナが見つかった」と放送したので、福島県沖のサカナは汚染されていないと錯覚した人もいますが、正しくは「福島沖でも汚染されていないサカナもあった」ということで、まだ希な例のようです。
毒 物汚染がある場合や、流行病がはやったときには「安全な場所がある」という情報より、「あそこに毒物があるとか、細菌が見つかった」ということを先に伝え る必要があります。今回の原発事故の場合は東電からお金をもらったとか、力の強いものに逆らいたくないなどの事情で、報道なども「安全なところを報道す る」ということが続いています。もし毒物や細菌でそんな報道姿勢ではとても困ります。
つまり、台風が来ても「台風の進路」を報道するのではなく、「台風は沖縄を通過中で、北海道は快晴です。」という報道は無意味だということです。
いっぽう、千葉沖、茨城沖、宮城沖、青森沖(太平洋)の表を示します。ほぼ6月に水揚げされたサカナを表に示しました。
全体的に見ると、福島沖に比較して低く、数10ベクレルのレベルもサカナが多いのですが、なかにはスズキの83ベクレル、マダラの60ベクレルなどが見られますので、かなりの注意が必要でしょう。
茨城沖は福島に近いので1キログラム50ベクレル近くの汚染は仕方が無いのですが、青森沖が50から60ベクレルと高いのは驚きます。海流が北の方に流れたのは間違いないのですが、もしかすると生物濃縮(昨年、汚染されたサカナを今年は大きなサカナが食べて放射性物質が移動した)とも考えられます。
また北海道沖のサカナは数ベクレルに下がってきたようですが、先に示したように海洋の汚染は今回が初めての経験なので、海流や滞留、そして生物濃縮などがどのぐらい進むかは今後の問題です。
海とともに生きていた日本人、広島長崎で原爆の被災を受けた日本人、これまで世界に向かって「被曝は危険だ」と訴え続けてきた日本人、その日本人が始めて太平洋という公海を放射性物質で汚染し、国際基準では危険なサカナを水揚げしているというは実に恥ずかしいことです。
礼儀正しく、誠実で、法律などの社会的規律を守ろうとする日本人の伝統を思い起こして欲しいと思います。東電の社員の多くは立派な人なのに、なぜこんなに集団になると強面で、苦しんでいる人を助けようとしないのでしょうか?
ところで、川魚などの淡水のものは汚染が高いのですが、これは川の中にイオンがすくないので、取り込んだイオン(放射性物質を含む)を排出しないためと考えられています。
いずれにしても、当面、太平洋側(千葉沖から青森沖)までは食べない方が良いでしょう。また慎重な人は北海道沖、神奈川沖も避けることです。
本来は汚染されたサカナを市場に出すことは許されません。水俣病の場合は水銀でしたが、「穫れたのだから売る」というのではなく、「健康のために食べる」という基本を水産業の方は守ってください。
また政府は原子力の通常予算4500億円を取り崩して苦しんでいる農業、漁業の人を助けて欲しいと思います。
(平成24年7月4日)