4号機の仮設建屋の建設が始まり、放射性粉塵が飛び散っています。また、4号機の冷却装置が1日半、故障してプールの温度が10℃ばかり高くなりました.
多くの人が4号機の状態に不安を持っていますが、本来は充分な説明を行うべき政府、自治体、マスコミは「不安を持つ方がおかしい」ということで、冷却が不能になっても通報も避難誘導も、報道もしませんでした。
不安を持つのは人間として当然ですし、事故を起こした福島4号機の工事粉塵や冷却不能について、無条件で「大丈夫」ということはないからです。
そこで2,3回のつもりで4号機の問題を考えてみたいと思います。今まで多くの人が「4号機が危ない」と警告を出しておられますが、その根拠を科学的に説明したものが見当たらないので、ここでは最初から考えてみます。
また、このシリーズでは「2011年3月の爆発より大きな危険を生じるか」ということに焦点を当てています。
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4号機の核燃料プールの危険性は、
1)臨界に達して核爆発するのではないか?
2)崩壊熱で水が蒸発して冷やせなくなるのではないか?
の2つが心配されていると思います。
原発の核燃料が炉内で核爆発をして熱を発生し、その熱を水に移して発電に使うのが原発の原理ですが、使用する核燃料は「爆発しにくいウラン(4%ウラン235)」なので、爆発させるには、
1)適切な配置(1.5センチの燃料棒の集合体を作り15センチの空間を空けて詰める)、
2)燃料棒の間に水をはる(核爆発のためには水が必要)、
3)核爆発を止めるホウ素のようなものがない、
という3つの条件が必要です。
これに対してプールでは、
1)燃料集合体の間の間隔が30センチ(新)から40センチ(旧)も空いている、
2)水があるので、それは危険側、
3)普通はホウ素が入っている、
なので、現在の状態では核爆発は起こらないということになります。
それではプールから水が漏れた場合はどうでしょうか? 空だきになるので温度があがります。その場合は、
1)燃料の間隔は30センチ以上空いている、
2)空だきになり水がなくなるので爆発はしない、
3)ホウ素はある(注1)、
ということで爆発しません。
次にプールが地震などで壊れてプールの中の燃料がガラガラと床まで落下した場合はどうでしょうか?
1)燃料の間隔は落ちていくときや落ちた床で15センチになることがある、
2)水はない場合とある場合がある、
3)ホウ素はあるけれどどこかに飛んでしまうことがある(注2)、
ということで、プールが空だきになるより落下した方が核爆発の危険性は高くなります。しかし、このブログに書いたようにたとえ小さな核爆発を起こしても、それは続かないでしょう。
プールから燃料が床に落下するということは、落下した燃料はばらばらでバインド(強く締め付ける)もしていません。一方、核爆発すると熱が大量にでますので、燃料棒の間の水が沸騰し、空気が膨張するので、その力で燃料棒が離れて爆発は止まります(注3)。
広島の原爆ではウラン235が90%以上だったのであのような激しい爆発をしたのですが、ウランの濃度が低ければ東海村の臨界事故のように建物の中にいる人が被曝して死亡するぐらいの事故になるでしょう。
地震が起きて福島4号機がゆっくりと破壊し、燃料プールが徐々に破壊され、そこから燃料棒が床に落下し、そこで空間的にちょうど爆発状態になった燃料が瞬間的に臨界になっても原発の外には影響はありません。
1日か2日経って、激しい雨が降ったり、水をかけたりして床に落下した燃料が水没するまで2日ぐらいが経ち、そこで臨界になった場合、核爆発が起こる可能性があります。つまり強い地震が起こってから4日ほどの余裕があるということです。
この時点では原発の風下10キロぐらいは避難する必要を生じます。
さらに、核爆発が起こるとそれまで床に落下していた燃料棒の位置が変わるので、それが再び爆発するような位置に変わるまでにまた数日を要するでしょう。
1週間後ぐらいで、1万分の1ぐらいの確率で2回目の核爆発が起こった場合、原発の風下30キロぐらいが危険地帯になると考えられます。
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まとめると次のようになります。
1)4号機が核爆発する可能性はほとんど無い、
2)水が漏れて空だきになったら核爆発の危険性は下がる(水がないと安全になる)、
3)地震で4号機が倒壊すると1万分の1ぐらいの確率で原発の風下30キロぐらいは危険地帯になる。
私は4号機の核爆発は心配していません。それより工事の粉塵の方が危険です。
「tdyno.167-(10:00).mp3」をダウンロード
(注1)ホウ素はカチオンが水素イオン、ナトリウムイオンなどでホウ素そのものはマイナスイオンで溶解しています。水が蒸発するときにホウ素やホウ酸ナトリウムかホウ酸として燃料棒の表面につきますが、徐々に加熱によって酸化ホウ素になり表面についていると考えられます。
(注2)ホウ素の化合物の沈着体は粉状なので、場合によっては表面が仮装したら燃料棒が落下などをするときにはがれる可能性もあります。
(注3)燃料集合体は強くバインドされていますので、温度などによって違いますが、燃料集合体だけでは本数が不足して核爆発に至ることはありません。
(平成24年7月3日)