しばらく旅行をしていましたら、読者の方からのメールがたまって一部のメールにご返事ができなくなりました。いずれのご質問もかなり重要なもので、ご返事が出来ないのはまことに申し訳ないのですが、時間がとれそうもないので、「お子さんを守る考え方」のシリーズを少し書いて、日常の生活のご参考にしていただければと思います。今回はその1回目で、復習もかねて、主に「考え方」を整理します。
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「どのぐらい被曝しても大丈夫だろうか?」というご心配を今でも多くの方がお持ちです。それは「原発推進側」も「被曝心配の方」の両方が同じような錯覚をしていることもあります。

 

まず、法律では(一般人で原発からの被曝に限っては)11ミリを上限にしているということです。この11ミリは国際的にも、また国内法でも決まっている値で、もちろん専門家がいろいろな知見を元にしていますから、決して「いい加減な値」ではありません。

 

政府をはじめ、マスコミの記者、一般の方で「法律で11ミリと決まっていても、俺は1100ミリまで大丈夫と思う」と発言している人がおられます。自分がどのように思うかは個人の自由ですが、人に違法行為を勧めているのですから、お子さんを守る時に、そんなことにだまされてはいけません。特に一つか二つの論文を読んでそれだけで判断している人もいますが、被曝と健康はそれほど簡単ではないので、あまり個人で判断しない方が良いでしょう。

 

道路の制限速度が60キロと決まっているのに、急ぐから自分で120キロで走っても良いと考えるのは良くないことですが、さらに他人に「あの道路は60キロだけど、120キロでも大丈夫だよ」というようなことを公的に言ったり、ブログに書いたりするのは社会的にやってはいけないことです。

 

もし、変えるなら法律や規則を変えてからにしなければなりませんし、放射線障害防止規則(厚労省)のものは201110月(事故後半年)に改正されていますが、それでも11ミリも含め、土壌汚染などの数値は変わっていません。つまり今の政府は、片方で法律を改正して11ミリのままにしながら、社会的には瓦礫問題などで法律違反(核廃棄物を瓦礫と呼んだりしています)を繰り返し、いわば「ダブルスタンダードの状態」を続けていますが、国民は自分たちの健康の問題ですので、紛れないようにしましょう。

 

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ところで、11ミリで安心か?ということになると難しくなります。簡単に言うと「学問ではどこから危険かわからないので、11ミリにした」ということですし、「原発で11ミリということは、他の被曝も入れると15ミリと言うこと」とも言えます。

 

被曝は足し算ですから、一階が自然被曝で1.5ミリ、二階が医療被曝で2.2ミリ、三階が核実験被曝で0.3ミリで、原発がなくても14ミリは被曝します。それに原発の1ミリが合算されるので、合計で5ミリです。

 

人間が自然被曝に対して防御能力を持っていて、自然放射線の1.5ミリより少し余裕があってゼロレベルから見ると12ミリぐらいまで大丈夫と思われます。そうすると自然被曝に加えて医療被曝で2.2ミリの被曝をしますと合計3.7ミリになって、少し危険な領域に入ります。それが、ランセット論文(世界でもっとも権威のある医学雑誌)では「日本人は医療被曝で欧米人の3倍の発がん」という結論にもつながっています。

 

つまり、いろいろなことを言う人がおられますが、子どもを守るという点では「原爆事故がなくても被曝は注意しなければならない」ということになります。それに加えて少し年齢の高い人は核実験の被曝を多く受けていますから、これが0.3ミリぐらいで、「被曝の3階の屋根まで」で4ミリになっています。福島原発事故は私たちに被曝に注意しなければならないという警告をしてくれたようなものです。

 

原発からの被曝が少し多い人は、1階から3階部分を減らすことで、たとえばカリウムを含む食品を控えるとか、医療被曝をできるだけ避けるなども有効です。ただカリウムは必要な元素ですから、あまり極端な食事も注意しましょう。

 

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先日、広島・長崎の被曝と病気についての最新の論文を紹介しましたが、1ミリシーベルト以下でも若干の発がんが見られています。その点では、「1100ミリまで大丈夫」などという奇妙なへりくつには惑わされずに、被曝を避けるようにしなければならないでしょう。

 

第一回はこのぐらいにして、とにかく11ミリ(外部、内部の合計)を守るという決意をすることです。子どもは親を信じ、楽しく人生を送っています。もちろん人間には限界がありますから、「人知を尽くしても」わからないことがあり、それで子どもが病気になることも万が一にはあるでしょうが、その場合は「外出もさせられない(交通事故)、暖房器具も使えない(火事)」などとなります。あくまでも常識の範囲は親の責任ということです。

 

でもお母さんの責任だけで守ることは出来ません。政府は11ミリを守るようにし、農家は1キロ40ベクレル以上の食材は出荷せず、学校関係者は子どもをどこかに連れて行ったりするときには、一つのことを計算するのではなく、その子どもの総合的な被曝量を計算し、お母さんの負担を減らすようにしてください。

 

 

 

(平成24513日)

 

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