年金にもいろいろなタイプがあって、とても複雑ですが、この複雑なものをよく理解するにはまずは簡単なモデルを作って考えるのが良いようです。おまけに年金には「賦課型」などの専門用語がありますが、日常的な用語を使うと、「積立型」と「その年型(使い切り型)」があります。もちろん、中間タイプもあるのですが、それは複雑になるだけなので割愛します。

 

・・・その年型・・・

 

もともと「年金」が必要になったのは、大家族から小家族になり、「年を取ったら子供の世話」という昔ながらの人生を送ることができなくなったからです。かつての日本では「年を取ったら子供の世話」という時代で、もちろん家庭で中では「その年型」でした。家族はその家の収入を稼いでくる人(昔はお父さん)の賃金で暮らし、その中にお年寄りも入っていました。

 

およそ一人のお父さんが働いて、妻、子供2人、おや2人の5人を養っていたという勘定です。だから、その年に収入が少ないと家族全員で工夫をして貧乏をしのぎ、収入の多い年にはたまには旅行に行ったりしたのです。稼いでくる人が病気をしても両親が旅行に行くなどということはあり得ませんでした。

 

私が「その年型」の年金をまずは推奨しているのはこれが理由だからです。これを言うと年金の専門家は「そんなこと言ってもヨーロッパでは・・・」という話がすぐ出てくるのですが、日本とヨーロッパでは生活、社会、人生、宗教などが違います。親と子供、夫婦関係も全く違うのに、すぐヨーロッパが出てくるので困ります。

 

たとえばアメリカやヨーロッパでは子供が18歳になると原則的に家を出て財政的な援助もあまりしません。大学に進学しても授業料はもとより生活費も自前でやるのが普通です。だから、大学の講義も休講を喜ぶ(お金を払っているのに授業が受けられない)と言うことはありません。

 

つまり、欧米では18歳で子供も家族の一員ではなくなり独立した社会人になりますが、日本は18歳になっても家族の一員であり、時には結婚してもまだ家族と一緒と言うこともあるぐらいです。こんなに親子関係が違うのに、年金となると「アメリカでは・・・」と出てくるのがまた混乱に拍車をかけています。

 

日本の年金を「その年型」にすると、まず第一に「年金がどこから出ているか」がはっきりします。その年(実際にはその前の年)の若い人の稼ぎに応じて年金額が決まります。そうするとお年寄りの収入は若い人の稼ぎによりますから、「働いている人を大切にしなければ」という気持ちが起きると思うのです(だから昔が良いとか大家族が良いということではありません)。

 

利回りがどう、分配金がどうというように「お金を中心に年金を考える」のではなく「人の心の動き」を第一にすべきというのが私の考えです。「お年寄りを大切に」というのはわかるのですが、その前に「働いている人を尊敬する」というのが日本の風習であり、それはとても大切なことと思います。

 

「その年型」というのは、それ以外に多くの利点があります。それは次に説明する「積立型」の欠点である、1)インフレが来たら終わり、2)社会保険庁(今は別組織)のようなところだけが優遇され、年金をもらう方が被害を受けるということがなくなる、という理由もあるからです。それをはっきりさせるために、先に「積立型」の説明をしておきます。

 

・・・積立型・・・

 

積立型とは読んで字のごとく、自分が若いうちからお金を積み立てて、65歳になったらそれを年金として受け取っていくという方式です。積み立てるお金は半分ぐらい企業や国が分担してくれる場合もありますが、これは一種のごまかしともいうべきものです。

 

企業がその収益の中から従業員にどの程度、お金を分配するかというのはその社会の伝統や力関係で決まりますが、とにかく粗利益の中から厚生費や年金などのお金を差し引き、その残りを重役と従業員で分けるのですから、企業が年金として払うお金を従業員に渡せば、同じことです。

 

また国も「税金を使って公務員の年金を分担する」というのも、単にその分の給与を増やせば良いだけのことです。

 

つまり、「積み立て年金」では個人が貯金するより、企業や国が出してくれるから得になるというのはトリックのようなものです。でも、積立型の場合はもっと基本的な「だまし」があります。それは次回に回します。

 

 

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(平成2447日)