日本の裁判に裁判員制度が導入されて数年が経ちます。この制度の成立も国民の議論が不十分であったという問題点がありますが、「法律」、「司法」、「裁判」という問題を単なる専門家のなかだけではなく、広く国民が参加する方向に進んだものと解釈できます。

 

今回の福島原発の問題も、私は被曝に関して「電離放射線障害防止規則」を引用して子供を被曝から守ろうとしていますが、これも原子炉等基本法、放射性物質に関する基本的な法律など複雑な法律を持ち出すと、法律の用語の論争になり、本質を見失うからです。

 

明らかに法律に反しているのに東電が除染もなにもしないのは、司法の力が落ちていることもありますが、単純、明快、国民の目から見て明らかに違法な行為をそのまま取り締まることができるようなシステムが必要です。

 

ここで私が「公職選挙法」をあげましたのは、専門的な法律論議ではなく、「民主主義にふさわしい法律の整備」という意味で、内容的には「広い意味での贈賄罪、憲法違反罪」のようなものが必要な社会になったということを指摘したいためです。

 

テレビ朝日のニュースステーションを担当する古館さんが原子力村から原発報道に強い圧力があったことを告白したことは、報道に命をかける人としては遅いタイミングではありましたが、一歩前進でもあります.このチャンスも活かしたいものです。

 

原発事故以来、これだけ法律違反、職務規律違反が目立つ中で検察が東電や自治体などの人を逮捕、もしくはそれに類する行為に出ないのは、司法が権力と癒着しつつあることもありますが、社会に独占企業が強大な力を持っていることにもあります。

 

私も数回にわたって政府機関や電力から「不適切な報道である」とか「不適切な報道をしたからスポンサーを降りる可能性がある」と脅された例を聞いています.その中で、もっとも驚いたのは、ある大学の教授が地球温暖化で発言をしたら、環境省の係官から「地球温暖化を疑う発言は日本国に損害を与える」旨の電話を受けたという話を聞いたときです.

 

大学の教授は憲法で学問の自由が規定されていて、研究、発表などに制限を加えてはいけないのに、このようなことは日常茶飯事だと言われました.またテレビなどでは「スポンサーを降りるぞ」という脅しも頻繁だとたびたび聞きます.

 

役所が個人の学者の発言についてクレームをつけてくるのは論外ですが、電力がいろいろなところに電話やその他の方法で「裏から」圧力をかけていることは常にささやかれています.電力会社の「工作」はかならず「裏」で行われますが、それは電力自身が「社会に容認されないことをしている」という意識があるからでしょう。

 

たとえば東電の社長は「公共広告機構」の理事長を兼務していましたが、これは「広告料が最大の企業」だからです。もともと東電は宣伝をする必要のない会社で若干の広報が必要にしても、多額の広告費を出す必要はありません。

 

でも現実には、電気会社は政治資金を出して政治家を、天下り先を作って役人を、研究費を出して御用学者を、そして宣伝費を出してマスコミをコントロールしてきました。でも、それらはすべて「私たちが払っている電気代」なのです。これが「日本の電気料金はアメリカの2倍で、電気の消費量はアメリカの2分の1」という国辱的とも言える状態を国民に強いて来たのです.

 

福島原発事故の原因の一つも不誠実な電力会社の経営にあるのですが、それを具体的に防ぐために、たとえば、「広告費を必要とする宣伝の禁止」、「政治献金、役人の再就職先の斡旋、研究費の支給、報道関係者の接待は準贈賄罪」、「表現の自由、学問の自由に反する行為を禁止する法律」を作る必要があると思います.

 

たとえば、「公職選挙法」のように「電力からこのような電話がきた」とか「圧力をかけたメールを証拠として提出する」などで電力を逮捕できるような実効性のある法律を作り、地域独占性のある企業については厳しい法的な制限をする一方、もし東電が「送発電分離」や「売電の完全自由化」に踏み切れば、自由な企業の活動として政治家への寄付金もその他の活動の自由も認められるようにすると良いと思います.

 

つまり、「地域独占」という他人の活動に制限を加えているのに、自分は私企業並みの自由な活動を保障されていたところに今の電力会社の腐敗の原因の一つがあると考えられるからです.次の選挙ではこのような法律を作ると公言した人に投票したいと思います。

 

(平成24314日)