モモの「時間泥棒」も有名ですが、社会にはなにかと人が大切にしているものを盗もうとしている人がいるものです。その一つに1990年までの高度成長とバブル崩壊で多くの日本人が「すこしやり過ぎじゃないか?もっと質素な生活をしないと」と思っているのを見て「これはお金を盗めるぞ」と考えた一団がいます。

 

このことと似ているものに、「電子化されたお金の取引」が始まり、それまでは「金(きん)」とか「札束」という現物の移動があった巨額のお金の取引が、通信によって瞬時に行うことができるようになったという技術的進歩を逆手にとって、一儲けしようとした人が現れました。

 

2008年のリーマンショック、2010年のギリシャ崩壊などはその一つの典型的な例とも言えるでしょう。金融は本来、多くの人の預金などを「社会で有用なことをしようとしている人に資金提供して社会の発展に寄与する」ことが目的ですが、それが「関係者の破滅を伴う単なるマネーゲーム」となったのです。

 

さて、リサイクル、省エネ、温暖化、節電などはいずれもこの種の「お金泥棒」の類で、日本人が善良で節約家であることを狙ってきたものです。「もったいない」、「クールビズ」などもまったく同じ「ダマシの手口」なのです。

 

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節電はなぜ「ダマシ」なのでしょうか? それにはまず「アメリカ人一人あたり消費している電気は日本人の2倍」、「アメリカの電気代は日本の2分の1」、「日本の製品はアメリカの製品より安くて便利」、「日本人とアメリカ人はほぼ同じ所得」という4つ連立方程式を解いてみましょう。

 

このような連立方程式を自分で解くときには、「あまり詳しいデータに振り回されず、少ないデータで頭を巡らす」ことをして、最終結論が得られたら、それからネットでデータを調べるなり、なにかのチャンスがある時に専門家に聞いてみるのが良いと思います(専門家の多くは複雑に回答してくると思いますが)。

 

・・・さて、始めます・・・

 

東電が電気を作るのと新日鐵が鉄鋼生産をするのは工業生産としてはそれほど変わらない。かたや石炭を焚いてタービンを回して電気を作り、かたや石炭を焚いて高炉で鉄を溶かして還元する。両方とも大規模でエネルギー産業である。

 

日本の鉄鋼は世界でも強い競争力を持っている。それなのになぜ、電気はアメリカの2倍のコストがかかっているのだろうか? 電気を作るコストは燃料費の他に、発電効率、送電距離などがあるが、いずれもアメリカより日本の方が優れている.発電効率の日本の技術は世界に誇るものだし、送電距離は国土の広いアメリカと日本では比べものにならない。

 

となると、技術的には「電気代が2倍高い」とか「日本は一人あたりの電気をアメリカの2分の1しか作っていない」という疑問はますます深くなる.

 

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「考える」ためにはこの辺で一段落しておいた方が良いのが普通です.あまりギリギリと追い詰めるとだんだん専門の領域に入り、そこでうっかり「電力のデータ」などを参考にすると、また振り出しに戻ってしまうからです.

 

この問題の難しいところは「本当に知らなければならないデータ」は、電力やマスコミが利害関係で明らかにしていないことと、「節電は大切なことだ」という「思想」とがあるところで交錯していることによります。自分の心から「節電が良いか悪いかということと、日本人がなんでアメリカ人に対して2分の1しか使えず、さらに節電しなければならないのか?」を分けることがとても難しく、データはそのところでキュッと曲がってしまっているからです.

 

実際には、電力が独占であること、議員や学者にお金を配っていること、役人の再就職に骨を折っていることなどに起因しているのですが、それを具体的な数値で追い詰めるのは難しく、おおよそこのぐらいでいったん引いて少し外から見るのが正解です.

「takeda_20120310no.458-(10:53).mp3」をダウンロード

 

 

 

(平成2439日)