(まだ子供の被曝が止まりません。場所、焼却、セシウム再飛散、給食、先生の態度などいろいろあり、事態は複雑になっています。そこで、少し厳しい内容を含みますが、各専門家の方に私の見解を示して、子供の被曝を減らすのに是非、ご協力いただきたいと思うからです。)

 

福島県の医師ばかりではなく、日本の多くの医師が福島の子供36万人の甲状腺の超音波検査を担当しています。もともと、医師は普段からものすごく忙しく、労働基準法違反ではないかというぐらいに働いて患者さんの命を守っています。そのなかでさらに福島の協力をするのだから、それは本当に大変なことと思います。

 

さらに日常的に患者さんから被曝について相談されるので、医師は個別に説明しています。給食などからの被曝についてもできるだけ被曝を防ごうとアドバイスをしているのも医師です。

 

一部の医師が「国際的な勧告や法律で定めた基準など関係ない。1100ミリまで大丈夫」などと言っていますが、このように被曝を減らすことに尽力している医師がほとんどであることもまた事実です。

 

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このブログで私は「医師は国民の健康に関することについて、自由に発言することは許されない。医師という専門職は社会の合意を大切にしないと、医師に対する信頼性を失う」と再々、指摘してきました。特に11ミリと決まっている被曝限度を医師の判断で「法律違反するように」指導することは許されないと言ってきました。

 

これに対して多くの医師は賛同してくれましたが、「医師に辛すぎる」とのご批判もいただいています。ただ、私の子供も兄も、また甥も医師で私の身の回りには医師が多いので、医師の仕事の厳しさなどはよく知っています。でも、私のような教師、医師はやはり自らの限界を良く理解して決して社会から糾弾されるようなことをしてはいけないのです。

 

裁判官は人の命を左右し、医師は人の体を左右し、そして教師は人の魂を左右することがあるからです。その意味で、これらの職を持つ人は日本社会に残された「専門的な雰囲気を持った聖職」であることは間違いありません。

 

医療関係では医師は患者さんの被曝の限度を自分で決めてきました。それが少しルーズだったのではないでしょうか。それも含めて見解を示したいと思います。

 

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福島第一原発事故で、一部の医師が「被曝は危険では無い」と言ったことで、チェルノブイリでも実施した「国家のバスによる緊急避難」や「15ミリシーベルト以上になる地域の強制移住」などがされませんでした。

 

それなのに、福島36万人の子供の健康診断や、福島医大に被曝の特別治療部隊をそろえるなど、「安全だけれど危険」、「避難は不要だが、診察や治療は必要」というスタンスをとっています。

 

これはきわめて分かりにくく、「安全だ」といって避難させず、「患者を大量にでるのを期待している」と見えます。さらに「被曝を心配するよりストレスの方が影響が多い」ということで、「被曝させてストレスをため、さらに心理治療のチームを送る」というマッチポンプとも言うべき状態が発生しています。

 

医師が「レントゲンはとらないに超したことはない」という指導をしてきて、法律で「11ミリ」と決まっているのに、「1400回の胸のレントゲンに相当する120ミリの新基準」を支持して「不安になる方が危険」というのもあまりに身勝手です。

 

今からでも遅くないので、医師会は「法律を早急に変えるべきという声明」と、病院のレントゲン室の標識と防護(管理区域の標識やレントゲン照射中に医師が別室にいるシステム)などを変更し、言っていることとやっていることの統一をとらなければならないと思います。

 

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私は逆の方向に進むべきと考えます。医師は「集団の健康維持のための予防原則」をよく勉強し、「科学的に不明な場合は、十分に安全な基準を守り、科学的に明らかになった時点で規制をゆるめる」というこれまでの人類の知恵を理解した言動に出てもらいたいと思います。

 

同時に、福島原発関係で「11ミリ以上の被曝は問題がない」という趣旨の発言をした医師は、自ら非を認めて引退してください。福島医大は放射線関係の組織を解散してください。医師が自らの意思で判断できるのは医療行為に関わる被曝に関してだけで、原発からの被曝については医師はその権限外にあるからです。

 

医師の倫理を破っているのは少数の医師であることは確かですが、医師は専門家集団を形成していることによって職を全うしているのですから、このような危機のときに集団としての力を発揮してください。

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(平成2435日)