「高齢化社会」とか「超高齢化」とかいう用語があります。60歳、あるいは65歳以上の人が多い社会を「高齢化社会」というのが一般できですが、この用語はいかにも視野が狭く、適切な用語ではありません。

 

なぜ、60歳、65歳以上の人を「高齢者」と言うのかというと、平均寿命が70歳の頃、年金制度ができ、大家族制が無くなったころの社会を基準にしているからです。平均寿命が短いのですから、当然、60歳、65歳の人の数は少なく、若い人を基準にすると「高齢者」と感じられたのでしょう。

 

でも、かつて中学校を卒業したら勤めに出ていたのに、今は高校全入、大学の進学率も半分ぐらいになりました。就職の平均年齢は15歳が20歳になっています。また女性の結婚年齢は20歳ぐらいから30歳になり、35歳を過ぎた出産もそれほど珍しくない時代です。さらに閉経年齢も明治時代の40歳から50歳代半ばすぎになっています。

 

つまり年齢とその人の一生という点では、おおよそ1.5倍になっているとしてもそれほど間違いでは無いでしょう。今後、平均寿命は21世紀末に95歳から100歳になるのは間違いありません。そうなると80歳以上が「高齢者」で、定年も80歳になります。つまり20歳まで教育、20歳から80歳までが仕事、80歳から100歳までが引退後の晩年とするのが適当でしょう。

 

80歳以上の人の数は少し少ないと思いますが、医療費などがかかるので、簡単に予測すると、人生20年が教育、60年が仕事、20年が晩年ですから、他人の世話になるのが40年、自分が稼ぐのが60年ですから、年金ができた頃とあまりかわりません。

 

それに加えて、女性の職場進出、電子化による労働生産性の向上、社会システムの効率化などが進みますから、むしろ仕事をする人の負担は「重くなる」のではなく「軽くなる」と考えられます。増税の必要なし!!

 

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私のエッセイに「老婆の時間」というのがありますが、縁側でひなたぼっこしている老婆が家の前の道を忙しく走り去る若い学生を見送って、「ああ、私の人生いも・・・」と思う情景を書いています。本当はまだまだ人生の時間を楽しめる老婆が、社会の「常識」に押しやられて人生を諦めているように思われたからです。

 

老婆でも若い学生でも人生の時間は同じく貴重であり、それを社会的に封殺することは良いことではないと思います。

 

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私がテレビで「50歳以上の男性は意味が無い」と言っているのも同じことで、現在のような停滞している社会では、比較的年齢が高い人の権力が強くなり、若い時代に活躍する芽を取られることがあります。仕事をする時間はかつては15歳から55歳までの40年だったのに、これからは20歳から75歳までの55歳になるのですから、50歳以上の男性は30年の仕事の前半生に区切りをつけて、若い人の人生の時間を考える方がよいという意味です。

 

つまり、一見して「老婆の時間」と「50歳以上の男性は意味が無い」というのは矛盾しているように見えますが、私が言いたいことは「どの人も年齢によらす、同じ価値を持つ時間を過ごすように日本人全体が考えた方が良い」という意味なのです。

 

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人間の人生は、若い頃は20年ぐらい自分を鍛えるのに使い、その間に、兵役、ボランティア、外国生活なども2年ぐらいは経験した方が良いでしょう。でも、若い頃は長い間、教育を受けるより、少し早めに社会に出た方がよいので、平均はやはり20歳ぐらいというところでしょう。

 

一方、仕事を辞めて引退が今のように65歳とすると、100歳までの35年、することがないのはやはり歪んだ人生のように思います。そこで80歳を定年にすることになりますが、体力的には今の70歳が100年後の80歳になるでしょう。

 

明治の人の随筆などを読むと、当時の50歳の人は今の80歳と同じぐらいの体力の衰えを感じています。人間のように集団性の動物は全体の動きに合わせて個人の体力まで変わるのです。

 

今、消費税率を上げるために、「高齢化社会」が問題になっていますが、私はその前に、日本会の50年後、100年後のイメージを作るべきでしょう。1960年に始まった年金を考えた社会はあまりに「その時」だけを視野に入れていたので、破綻をしました。今度、改めて日本国民の人生を考えるときには、「高齢化社会」という言葉を使わないことが大切と思います。

 

従って、「高齢化社会がきて大変になる」と暗くなるのではなく、「長く人生を楽しむことができるようになるぞ!」と考え、「どんなに寿命が延びても高齢化にはならない」とするのがまともな日本にする第一歩を思います。

 

「takeda_20120210no.418-(9:16).mp3」をダウンロード

 

 

(平成2429日)