学問というのはそれほど簡単なものではなく、一つの法則や現象が認められるためには、厳密な観測や理論、考察を経て専門分野の人が繰り返しても同じ結果が得られることが確認されたものが、一つ一つ組み立てられていきます。

 

もちろん、学問は常に新しいものですから、これまで体系化された学問に対してそれと異なることが出てきた場合は、従来の学問と比較して、これまた厳密に検討されるのです。

 

ところで、「ゴミの量と環境」に関わるもっとも基礎的な知は「質量保存則」です。人間が生活するには色々なものが必要ですから、それを生物や鉱物、それに空気や水から得ます。たとえば「暖炉で薪をくべる」という比較的単純なことでも、空気中のCO2と根からの水を使って樹木が育ち、それを伐採して薪にするのですが、その時でも山に入るための道路、道路に敷く砂利、そこを走るトラックなどすべてのものを考える必要があります。

 

また薪をくべると灰がでたりCO2がでたりしますが、それ以外に暖炉を使えば暖炉は少しずつ劣化していきます。これら普通には「無数」とも思われる膨大なことをすべて計算すると、「暖炉で薪をくべる」ということが、環境にどのような影響を与えるかが判ります。

 

このときの計算の大原則が「質量保存則」で、「地球上にあるものは、何をしても増えも減りもしない」ということです。

 

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さて、国家が経済成長をはじめて、そこに生活する人が使うものが増えると、それと同じゴミが発生します。成長をはじめた直後には、社会に投入されるものは「ストック」という形で蓄積されることもあるのですが、成長が一段落すると「フロー」、つまり社会に滞留しているものの量は変化せずに、入ったものだけ社会から出るという状態になります。これを学問的には「定常状態」と表現するのが普通です。

 

江戸時代の日本は定常状態であり、現在の日本も定常状態です。ただ、そこに蓄積されているものがかなり違うのと、物質の流れが大きく異なります。これを一言で言うのはなかなか難しいのですが、江戸時代を基準とすると現代は約2000倍といったところです。

 

一つ前の定常状態から、次の定常状態に移るときには、物品の生産量、蓄積量、廃棄物の処理量などが増えていくので複雑な状態になります。その時に、いろいろ思いがけないことが起こります。その一つが「ものが増えると環境が悪化する」ということです。

 

ヨーロッパでは1950年、日本では1970年、中国では1990年にこのことに基づく環境破壊が見られました。この原因は簡単に言うと、「ゴミが増えたのに、かたづけない」と言うことが原因しています。

 

社会が経済成長していく過程で、人間はそれまで自分たちのゴミを誰が片付けていたのか忘れてしまいます。もちろん片付けていたのは自然で、自然は人間がゴミを増やしてもそれに合わせてゴミを片付けてはくれないので、その結果、環境が破壊されます。それは大気、水質、ゴミ・・・何でも同じです。

 

つまり、「ゴミが増えたら環境が悪くなる」というのは間違いで、「ゴミが増えても人間が片付けなければ環境が悪くなる」ということで、「部屋に物ばかり持ち込んで、さっぱり片付けないどら息子」ということです。

 

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「ゴミが増えると環境が悪くなる」というのではなく、「ゴミが増えた時に片付けなければ環境が悪くなる」ということですから、経済成長の過程で痛い目に遭うと、人間はゴミを片付けるので、現在のヨーロッパや日本のように成長が一段落するとかつてより環境は良くなるのが普通です。

 

これは人間も同じで、成長の過程で思春期(反抗期など)を迎えますが、これは「歳を取ったから」ではなく「歳を取る過程で、身体と心の成長にアンバランスが来るから」です。だから「思春期が来るから歳をとるな」というのが間違えであることは誰もが判ることです。

 

教育では「論理性」というのはとても大切で、子供には「情緒」ばかりではなく、「論理的思考力」も同時に身につけさせる必要があります。「ゴミが増えたら環境が悪くなる」のか、それとも「ゴミが増えた時のひずみで環境が悪くなる」のかを見分ける力は日本人が持つべき力の大切な一つです。

 

また、質量保存則は「目に見えるところだけを考えずに、総合的に見る」という心を持つためには無くてはならないことで、工業では「マスバランス」、エネルギーでは「エネルギーバランス」、経済では「マネーバランス」などすべての面で大変、重要な概念です。

 

道徳的に「ゴミを出さない方が良い」ということと、「ゴミを出したら環境が悪くなるか」ということは違うので、その点でも子供たちに「思想と科学」を混同しないように教育する上でも大切なことです。でも、現代の日本では「思想と科学」を混同する子供がほめられ、キチンと科学の心を持っている子供が、時に先生に怒られていることがあり、残念です。

 

 

 

(平成2425日)

 

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