福島のセシウムが急に増え、さらに福島第一原発の4号機が爆発したのではないかと心配されています。多くの人が心配しているのに、原子力関係者は事実や基礎的な考え方をほとんど公表していません。

 

このようなことは、今に始まったことではなく、これまでの原子力に共通して見られたことです。つまり、反原発の人たちが懸命に調べ、発信し、抗議をしていても、原発推進の人たちは「俺たちには殿様(政府)がついているから、彼らの相手にしなくても良い」という態度に終始したのです。

 

でも、これは反原発の人も同じでした。私は時に反原発の研究会などに行って、質問をすると「なんだ、こいつ! 原発側にいてケシカラン。そんな質問をしてどうなるのだ」という目で見られ、十分な答えをして貰ったことはありません。

 

「不毛な対立」というのはこういうのを言うのでしょう。お互いに自信に溢れ、自分たちの村に安住し、自分と異なる考えの人も立派な日本人であるということを認めようとはしないのです。

 

原発推進側は言葉使いは丁寧なのですが、慇懃無礼。反原発の方は、言葉使いは汚く、ののしるという感じです。私も反原発に近づきたくなかったのですが、その理由は「少し質問でもすると、ものすごい勢いで人格バッシングにあう」ということでした。

 

質問に答えてくれるよりも、レッテルを貼られ、バッシングを受けるので、質問がむなしく感じられました。でも、私たちが原発のことを考えたり、議論したりするのは、私たちの世代だけのことではありません。長く、日本の将来を左右することなのですから、少し、「俺が、俺が」というのを止めて「相手は?相手は?」という姿勢をとって欲しいものです。

 

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ところで、4号機とセシウムの急増はどうなっているのでしょうか? 私たちは子供たちを守るために、さらに何かをする必要があるのか、それとも、このまま何とかしのげるのでしょうか? それを自ら決めるためには単に「4号機が危ない」というだけではなく、「なぜ4号機は危ないのか」をキチンと示す必要があります。

 

論説やネットで「4号機が危ない」と言っておられる方の内容を理解しようとしたのですが、どれも科学的に十分な説明がありませんでした。科学というのは、自分の意見、恐れ、希望などとは違い、万人が理性的に納得できなければならないからです。「おまえは知識がないから、判らなくて当然だ」というのは科学ではありません。

 

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原発というのは原子炉の中で「核反応」が起こるものです。この「核反応」というのは難しいことのように思いますが、薪が燃える「化学反応」と同じものです。ただ、薪が燃えるのは大昔からのもので、ウランが燃えるのはキュリー夫人が見つけたもの(核の変化)なので、100年ほど前という新しいので、それを区別するために分けているだけです。

 

「燃える」という言葉を「なにかが変化して熱を出す」ということで言えば、「薪を燃やす、ウランを燃やす」と言っても間違ってはいません。

 

さて、薪を燃やすと、熱だけではなく煙やCO2(二酸化炭素)を出すように、ウランも燃えると「死の灰」を出します。薪を燃やしてできる煙も少し毒性がありますし、タバコの煙もその一種ですが、ウランを燃やしてできる死の灰はそれよりかなり毒性が強いので、問題になっているのです。

 

でも、薪が燃えている時に火を消すと、灰は残りますが、煙たいことはなくなるように、ウランも火を消すと死の灰は残りますが、燃えているときに比べるとずっと安全になります。そして薪の火を消すて暫くするとすっかり冷えて、片付けられるように、ウランも火を消して暫く(かなり長いが)すると冷えて、これも片付けられるようになります。

 

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あまりに簡単なことを説明しているようですが、実はこのような基礎的なことを間違えて解説している専門家もおられます。たとえば、「福島のセシウムにヨウ素が入っていないから、原発からではない」などがそれにあたりますが、原発からだろうが、畑からだろうが、火が消えた時間が同じなら、残っているものも同じです。

 

また、4号機が爆発したといわれますが、それが核爆発ならヨウ素が出るし、水素爆発や水蒸気爆発ならヨウ素は出ません。このような基本的なことをしっかり、完全に理解しておくことが「自分で判断する」にはもっとも大切なことなのです。

 

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少し長くなりましたから、ここで次に回します。ところで、福島のセシウムは相変わらず高い状態が続いていて、最新のデータでも、セシウム合計で60ベクレル(平方メートルあたり)もあります。この状態は1011月とはまったく違います。少し緩い警戒を続けてください。

 

(平成24115日)