政府や専門家は「法律では1年1ミリだが、緊急時は被曝量を上げることができる」と言っています。でも、現実に事故が起こったら急に体が放射線に強くなるわけでもなく、「なぜ、緊急時は被曝して良いか」という論理が必要です。
これについて、1)1年1ミリを超える分に相当するメリットを提示すること(正当化の原理)、2)事故の頻度に合わせて被曝量を決める、という二つのことが決まっています。「決まっている」というのは、1)はICRPで決まっていて、2)は日本の原子力の安全について責任を持つ原子力安全委員会の指針資料で示されていたからです。
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そのグラフを次に示します。
このグラフは原子力安全委員会が原発の安全性などを審査するときに使用されていたもので、「政府のお墨付きの資料」です。やや難しいグラフですが、原発がしょっちゅう事故を起こすときには、1年1ミリに規制しなければならないけれど、たまにしか起きない事故の時には1事故あたり10ミリとか、場合によっては100ミリに上げられるというものです。
この資料自体はイギリスの基準ですが、各国ともほぼ同じ基準でやっています。それによると、原発の事故が1000年に1度以下なら1事故あたり10ミリに、さらに事故が1万年に1度ぐらいの大事故なら1事故あたり100ミリに被曝限度を上げることができます。毎年のように事故が起こるなら被曝は低くしておかなければなりませんが、一生に一度なら、「1生に100ミリ」ということなので、1事故あたり10ミリぐらいは許容できるということです。さらに1万年に1回なら100ミリぐらい浴びると個人は少し損傷しますが、民族全体ではそれほどの損害はないということです。
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ところで、日本で原発が運転を始めたのはおおよそ今から40年ほどまで、その後、改良を加えながら建設を進め、1990年、つまり20年ほど前からほぼ現在のように「全国に原発がある」という状態になりました。そして2007年から2011年の4年間で、7つの原子力発電所が地震で破壊され、そのうち1つが爆発(福島第一)しました。従って、事故は20年に一度という頻度になると考えられます。
単純な実績では、震度6以上の地震が10年に13回。原発は100%の確率で破壊され、24基の原子炉の内、4基が爆発しました。つまり、原発が震度6の地震に見舞われたら、6分の1の確率で爆発します。次に、5年で7つの発電所が破壊したので、平均すると1年に1.4ヶの原発が地震で破壊することになります。それを6分の1にしますから、0.23ヶ、つまり4年から5年で一つづつ、原発が爆発するという結果になります。
ここでは、5年なのか、10年なのかは議論する必要はありません。「事故時には1年1ミリ以上の被曝が許される」と言っている「事故」とは「1000年に1度程度の大事故=1事故10ミリ」のことであり、今回のように20年目とか、10年に一度のような事故では「1年1ミリ」を適用するのが「今までの日本政府が採ってきた政策」(審査指針)であることを多くの人が理解すれば議論はなくなるでしょう。
(平成23年12月20日)