(放射線や東電との戦いが長くなりますから、少し難しい内容ですが。また下記の文章では本格的な裁判が始まり判決が降りたように記載しましたが、裁判官の判断は仮処分を却下したということです。でも、本質質的には変わっていませんが、正確な方が良いので。)
あるゴルフ場が東電の福島第一から飛んできた放射性物質のために損害をもたらしたとして訴訟をしたら、地裁が「ゴルフ場に降った放射性物質は、どの人のものか判らないから東電が片付ける必要はない」という驚くべき判決をした。これを、1)民放の解説(読者の方から)、2)被曝を防ぐ法律、3)公序良俗、の点から考えてみた。
(読者の方からの提供)「民法242条は「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。」とあります。ここでいう「物」とは動産のことです。つまり、今回のような放射性物質(動産)が不動産(土地・建物)に付着し、これが結合して分離・復旧させることができない、もしくは、そうするために過分の費用を要するような場合には、その動産の所有権は不動産の所有者が取得する、というものです。
よって、その放射性物質は不動産所有者の物となったのだから、東電に所有権はなく、よって、所有者自身が自分の物を他人(東電)に排除しろと請求すること(物権的妨害排除請求)はできない、と言いたいのだと思われます。(もっとも、不動産所有者の物であるから、不動産所有者がそれをどう処分しようと東電も文句は言えない。)
ただ、この民法の規定の趣旨は、そのような結合してしまった物を無理やり分離・復旧すると、それぞれの物の機能が失われたりなどして、社会経済上も、それぞれの当事者にとっても不利益であること、にあります。とすると、今回のような放射性物質の場合、これらをできるだけ分離・復旧すること(除染すること)は、むしろ社会経済上も被害者にとっても「利益」になることですから(不利益なのは加害者である東電だけ)、本条の規定の趣旨とは明らかに反しています。よって、今回の事例のような場合には、本条の適用はない(本条の予定するところではない)と思われます。」
関連資料1(電離放射線障害防止規則)(放射性物質がこぼれたとき等の措置) 第二十八条 事業者は、粉状又は液状の放射性物質がこぼれる等により汚染が生じたときは、直ちに、その汚染が拡がらない措置を講じ、かつ、汚染のおそれがある区域を標識によつて明示したうえ、別表第三に掲げる限度(その汚染が放射性物質取扱作業室以外の場所で生じたときは、別表第三に掲げる限度の十分の一)以下になるまでその汚染を除去しなければならない。
関連資料2(民法)「第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」
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(平成23年12月19日)