横浜でストロンチウムが見つかり、これが福島原発のものかどうか議論されている。相変わらず、国(文科省)は「事故は小さく見せる。東電の責任ではない」というのに必死だが、文科省は国民の側に向いて、次のことに答えて欲しい。
この写真はプルトニウム燃料を使っていた3号機の爆発だ。この炉の中にあった、いずれも6%のセシウムとストロンチウム、それにプルトニウムがどこに行ったのか、心配している国民に答えるのが、まず文科省がすることだ。東電のミスを隠すのに一所懸命になるのは一国の科学技術を所管する官庁としては恥ずかしい。
まず、第一に「噴煙がなぜ上部に上がっているか」ということだ。何かの爆発が起こったとき、なにの制限がなければ四方八方に散る。1号機の爆発が水素爆発で、その煙が四方八方に散っているのは納得できる。
原子炉の冷却水が無くなると、温度が上がって表面に付着している水や水蒸気と金属が反応して水素が発生し、それが炉から部屋の中にでる。水素は軽いので上に上り建物の天井付近で爆発する。それが1号機の煙だ。写真を見ると白い煙が四方八方に散っている。
ところが、3号機は「ボン」と上に上がっている。上に上がるということは方向性を持っているのだから大砲のような「筒」が必要になる。
3号機の簡単な図を示したが、建物の上のほうに空間があり、ここに水素がたまって、空気中の酸素と一気に反応して爆発する。それが水素爆発だ。ところが方向性をもって爆風が上部に上ったのだから、原子炉建屋の下の方で爆発が起こらなければならない。
しかし、原子炉建屋の下は格納容器で囲まれていて、それが破裂するしか爆発することができない。たとえば格納容器の下部に温度が高い核燃料が落ち、その時に水蒸気爆発したか、あるいは臨界に達して小規模な核爆発が起きたかが考えられるが、それもやや疑問がある。
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ところで、3号機はプルトニウム燃料を使っていて、プルトニウム濃度は9%程度だったと考えられる。またセシウム6%、ストロンチウム6%があった。1号機のように水素爆発なら揮発しやすいセシウムが多くなるが、下からの爆発なら、ストロンチウムもプルトニウムも同じように大気中に放出されたはずだ。
プルトニウムは格別に重いので、あまり飛ばないことも考えられるが、ストロンチウムの酸化物はセシウムとそれほど変わらないので、同じように大気中を移動すると考えられる。そうすると、「ストロンチウムは無い」と繰り返す政府の根拠は論理的ではない。
つまり、「事故を小さく見せて、国民を被曝させ、東電を守る」ということで終始一貫している政府の言動としては予想されることだが、「横浜や東京にストロンチウムもプルトニウムも飛んでいない」という研究を素早くやるなら、その前に、3号機の爆発を丁寧に説明する必要がある。国は国民の税金で運営されているだから、隠すのではなく、積極的に疑問点を説明する態度に180度切り替えなければならない。
(平成23年11月26日)