福島の原発事故の後ろに隠れていることで、とても大切なことが多くあります。たとえば、1)震度6で5つの発電所が全部、壊れ、回復の見込みがないこと、2)東海地震ではなく阪神淡路、東北に巨大地震が起きたこと、3)あれほどの地震だったのに東北新幹線の脱線が無かったこと、などです。
最初の原因は「原発の耐震設計はなかったこと」、2)の原因は東大のレベルが地に落ちたこと、3)は国鉄マンの高いレベルと電力会社の低いレベルを証明したこと、です。
ここでは3)について少し解説を加え、将来に備えたいと思います。JR東日本は2004年の中越地震で上越新幹線の脱線事故を起こしました。幸い、大事故には至らなかったのですが、JR東日本は深く反省し、「JRは絶対に事故を起こさない鉄道を目指す」ということで、時速300キロで走る新幹線を「どんな地震でも脱線させない」ということで研究し、対策をとりました。
JR東日本はかつての「国鉄マン」の精神が残っていますから、「安全に運行する」というプライドがあります。普段少しぐらい威張っていても、高いプライドを元に仕事をしてくれれば、それもそれで評価できると思います。
中越沖地震の時に、レールの脱線などの機械的な問題もありましたが、最も重要なことは「地震が来る」と判ったらすぐブレーキをかけて減速することです。そこで、JR東日本は「地震感知―非常ブレーキ」のシステムを導入したのです。
地震には二つの波があり、伝わる速度が違います。また地震が伝わるスピードより、電波の方が速いのでそれも利用できます。そこでどこかで地震が起こったことが判ると、小さな信号を受けて即座に非常ブレーキを自動的にかけます。新幹線は体が大きいので完全に止まるまでに4キロもかかるのですが、時速が100キロ程度に下がっていれば、脱線しないですむのです。
実際、3月11日に起こった東北大震災の時、27本の新幹線が高速で走っていたのですが、一本も脱線せずにセーフでした。今まで、私も新幹線に乗っていて「今、地震がきたらおだぶつだろうな」と思ったことが何回もありますが、どうやら大丈夫かも知れないのです。
・・・・・・・・・
これに対して東電はどうなっているのでしょうか? こちらは2007値の中越沖地震で柏崎刈羽原発が震度6で破壊し、3億ベクレルの放射性物質が漏れ、黒煙もうもうの火事を起こしました。
でも、この教訓はほとんど活かされず、今回の東北大震災では、青森から茨城まで合計5つの発電所が破壊されたのです。その原因は柏崎刈羽の破壊のあともIAEAの査察を拒否したり、「原子力は安全です。地震でも大丈夫です。火災は原子炉と関係ないところで起きたものです」と防御し、対策を怠ったのです。
今と同じですが、御用学者が登場して、「3億ベクレルぐらい漏れたからと言って大したことは無い」という「大丈夫おじさん」が登場し、それが結果的には大事故に結びついたのです。
もしJR東日本も中越沖地震で反省していなかったら、膨大な数の犠牲者を出し、会社は危機に陥っていたでしょう.人間は起こったことに素直にならなければなりませんが、玄海原発、泊原発の再開問題に見られるようにまだ「やらせメール」をやっているようでは原発はまた事故を起こすでしょう。
子供を被曝から守る上でも「大丈夫おじさん」の退場を求めますが、日本の電力会社は自ら「大丈夫おじさん」に「余計なことをして欲しくない」という意思を示して貰いたいものです。
(平成23年11月16日)