福島原発からの放射性物質が降ったところは苦しんでおられるし、大震災の傷も治っていません。でも、過去に起こった不幸をできるだけ小さくすること(除染)とともに、「災」をいかに「福」に転じるかも大きな力が必要です。
第二次世界大戦は人類にとって未曾有の災厄で、日本は原爆を2発落とされ、うち続いた大量虐殺(戦時にも許されない非戦闘員の大量爆撃死)を経験しました。ヨーロッパではドイツもほぼ同じ打撃を受けたのです。
しかし、第二次世界大戦が終わって暫く経つと、日本とドイツの復興がめざましく、戦争が終わって30年もたった1970年代には世界は、日本、ドイツ、アメリカを中心として動くようにまでなったのです。
戦勝国だったイギリスは衰退し、同じく勝ち組のフランス、オランダ、スペイン、ポルトガルなどの「持てる国(植民地を持った強国)」は衰退しました。
勝つためには命をも投げ出す戦争なのに、負けた方が繁栄するのですから、この世はおもしろいものです。戦争中に「戦争は負けた方が子供たちのためになるから、負けよう」などと言ったら気が違っていると思われるでしょう。私たちの知能も大したことはありません。
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大震災と福島原発事故も日本にとって大きな災厄でしたが、それでも大東亜戦争の敗北(犠牲者310万人)に比べれば小さいとも言えます。そこで、この災を福となすべく、なんとか頑張りたいと思います。
「歴史に学ぶ」と言いますが、なぜ戦勝国が衰退し、敗戦国が繁栄したかというと、そこにはいくつかのヒントがあります。1)負けたので古い人が総退陣した(やり方は悪かったが戦犯として退陣した。そして松下幸之助、本田宗一郎に代表される新しい人が登場した)、 2)負けたので古い制度が一掃された(やや行き過ぎもあったが、もっとも強力な軍部、枢密院、貴族院などが無くなり、憲法も学校制度も何もかにも変わった)、 3)日本を占領したのが衰退するソ連ではなく発展するアメリカだった、 4)日本人がアッサリした、こだわらない性質だった、などと考えられます。
今回も同じようなことが言えると思います。 まず、1)古い人に総退陣して貰う、 2)古く強力な組織を解体する、 3)日本の明るい将来像を描く、4)もちろん原発は廃止、 などができれば災いを転じることができるでしょう。
人間は過ちを犯すものですが、潔く責任をとり、後進に道を譲ることが大切でしょう。大東亜戦争を始めたのが間違っていたのか、正しかったのかはなかなか難しい問題です。単に戦争(力)で負けただけで正義が日本にあったかアメリカにあったかは判りません。
でも、「勝とうと思って負けた」のは事実であり、「310万人を失った」のも事実ですから、自分が正しいかどうかは別にして「失敗したら後退する」ことによって新しい日本ができたのではないかと思うからです。
310万人を失って徹底的にアメリカにやられたから人心を一新することができたけれど、東北大震災や福島原発ぐらいでは粘るということになるのか、それとも60歳以上の指導層が反省して、第一線から引き下がるか、そこに日本人の知恵と覚悟が示されると思います。
(平成23年11月9日)