なんでも人生には運不運があり、また時間が過ぎると不運が幸運に変わるものですが、福島原発からの放射性物質の飛び方にも運不運がありました。
埼玉、東京、神奈川という日本でも人口密度の高い地域に放射性物質があまり来なかったことは素直に良かったと思います。もちろん、この地域以外の人が被曝して良いということではありませんが、日本の中心部が被曝しなかったことは日本としては良かったという思いもあります。
でも、これは偶然でもあり、幸運だったとおもいます。というのは拙著「全国原発危険地帯マップ(全54基、周辺地域の危険度を風向きとともに解析!)」(日本文芸社)に詳しく載せましたが、原発ごとに「爆発したらどのような危険があるか」をまとめてみると、下の図のように茨城の東海第二原発が爆発したら、東京はかなりの被害があったと考えられるからです。
図では気象庁の月ごとの風向きを参考に、原発から直接、放射性物質で襲われる場所を示しています。おおよそ300キロ程度に飛びますし、山があるとそこで遮られます。図の矢印はそれを示しています。
東海第二発電所は、「防潮堤に穴が空いていた」ということで、せっかく5.4メートルの津波に対して、6.1メートルの防潮堤があったのに、水が進入して全電源を失い、爆発まで数時間という危機的な状態に陥ったのです。この図を見るにつけ、東海第二が爆発しなかったことを幸運に感じます。でも原発を運転するということはこういうことなのです。
今回の東北大震災では、青森の東通から東海第二まで5つの原発(発電所)が破壊されましたが、マスコミ報道部は「事故を小さく見せる」ということでほとんど報道されていません。普通なら、5つのどの原発も大変な破壊だったので、報道されているでしょう。
報道は大切です。正しく早い報道によって国民は事実を正しく知ることができ、その分だけ合理的な判断ができますから、感情的な対立も少なくなります。つまり情報は的確で多い方がもめることは少ないということです。
その点で読者の方から送っていただいた川越の地域の線量測定値はとても役に立ちます。個人で丹念に測定しておられ、http://maps.google.co.jp/maps/ms?ie=UTF8&oe=UTF8&msa=0&msid=202534321844877431171.0004a50bd6ad110f8617a
に公開されています。図では濃い青が0.1マイクロシーベルト(毎時)を下回りますから安全で、薄い緑の色の場所が0.1から0.2マイクロシーベルトぐらいですから、必要がなければ近づかない方が良いでしょう。
この方もお子さんがおられるようですが、地域で情報を交換し、できれば自分でマップを作り、お子さんと勉強し、その際にお子さんも原子力のことを正しく理解することになれば、今後もとても力になると思います。
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百獣の王ライオンは、人間に比べて比較にならないほどの運動神経と筋肉を持ち、ライオンと素手で戦って勝ち目のある人間はいないだろう。それでいて、ライオンは今ではすっかり人間に押さえつけられ、動物園の檻の中に入れられている。ライオンからみれば不思議なことに相違ない。
情報は力である。情報が隆々たる筋肉よりも大きな力であることを我々は知っている。私たちは多くの情報、正しい知のもとに子供たちを守る力を備えなければならないのだ。
(平成23年11月7日)